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2002年12月号

イビル冒険者ダンジョン顛末記

特集: ダンジョンズ&ドラゴンズであれこれ
筆者: 死せる詩人

僕は普段シナリオを作るとき、原則的に愚かなことしか考えていない。放っておいても可笑しなセッションになる面白人間ではないので、笑いを取るのは至難の業だからだ。ことコンベンションでマスタをするとあればその度合いはいよいよ強くなる。

 ある時、僕はD&D3Eのシナリオで「PCは全員イビルでやったらどうだろう」と考えた。結局シナリオ自体はダンジョンものなのでアライメントがイビルという程度では土台がぐらついたりはしない。ということで決定。今回のネタは
「PCはイビル」。

 さて、そうと決まればシナリオなんて簡単にできる。サクサクと用意されたツールをつかって機械的にダンジョンを作り当日に望んだ。うろ覚えだが当日のパーティ構成はこんな感じだったと思う。

・オーク-バーバリアン【ケオティック・イビル】
・ホブゴブリン-ファイター【ローフル・イビル】
・ゴブリン-ローグ【ニュートラル・イビル】
・コボルト-ソーサラー【ローフル・イビル】
・ハグベア-クレリック【ケオティック・イビル】※NPC

 でセッション中はいろいろありダンジョンの最後へ。ミッションの目的は
《善なる冒険者》に奪われた部族の宝を取り戻すことだった。最後の部屋に待ちかまえていたボスは《善なる冒険者》のうち二人、ウィザードとパラディンだった。ウィザードの方は結構ショボイ能力なのだが、パラディンは滅茶苦茶強くしかも戦闘が始まる前に正論で諭して来るという《善》っぷり。曰く、

「この宝は元々は人間の村が奉じていた宝で、それを君達が奪った物である。故に私達が行なったのは略奪でなく、奪還だ」

 全くもって太刀打ちできない完璧な正論である。証拠もあった。そんなときコボルトのPCがオークとホブゴブリンの影からコソコソとこう言い放った。

「良いか、良く聞け。こういう金言がある『俺の物は俺の物、お前の物は俺の物』。分かったら死ね」

 完全無欠のジャイアニズム宣言により戦闘が開始された。さっきも言ったがパラディンは無茶苦茶強い。ギッタバッタとなぎ倒されていくイビルPC(よく考えてみるといつもとおなじ光景だ)、途中ウィザードを倒しパラディンのHPの殆どを削るも、ついにはコボルトとゴブリンだけになってしまった。ゴブリンはコソコソと隠れてしまい、コボルトのPCが狙われることになる。
 そしてコボルトのPCにパラディンの凶刃が今まさに振り下ろされんとしたその時、死角に隠れていたゴブリンがパラディンの背後を取りローグ自慢の《急所攻撃》でズンバラリン。かくして世の善の種は刈り取られ、邪悪の勢力はいや増すのだった。

ダンジョンズ&ドラゴンズ情報倉庫
死せる詩人さんの「Dead Poet Society」


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