シナリオ「日シナの理緒ちゃん」10
1.
床の間がある薄暗い和室。大きなバッグを持った軽装の少女2人が入ってくる――
博美「料金の割にはきれいな部屋ねえ。広いし」
理緒「『出る』っていう話も聞いたけど、風情だと思えばいいよね」
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2.
博美「……あたし、ここ泊まるの嫌」
顔を真っ青にして立ちあがる博美。引きとめる理緒。
理緒「この部屋しか空いてないそうよ。今更ほかにホテルなんて見つからないってば」
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3.
博美「『出る』部屋で熟睡できずに一晩過ごすより、野宿したほうがマシよっ」
理緒「どうせ眠れないなら、TRPGででも遊んでいましょうよ。セッションに集中している間は周りのことも気にしないでいられるわよ」
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4.
博美「急にセッションと言っても、シナリオとかの準備はどうするの?」
理緒「60年の実績がある日シナのマスタリング講座なら、超一流の先生方が、即興マスタリングの要領も親切ていねいに教えてくださるのよ」
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5.
理緒「バインダー式で扱いやすいテキストと、実用新案のマスタリング練習機を活用すれば、不意のセッションを何度かこなしたのと同様の経験が身につくわ」
博美「そんな便利なものがあるなんて……」
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6.
理緒「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級合格者の9割以上が、日シナの出身なんですって」
博美「ゲームで一晩明かすのはいいとして、もし本当に『出た』らどうすればいいの?」
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7.
理緒「『出た』のが不運として、セッションに合流して貰いましょうよ」
博美「それも良いか。あはははは」
オバケ「『出た』のが不運ですか。あはははははは」
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8.
博美「――――」
オバケを見て卒倒する博美。それを見つめる理緒。
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9.
理緒「なんだ、眠っちゃったのね」
ぐったりとした博美を抱え起こし、独りつぶやく理緒。
オバケ「君、もしかして、霊感ぜんぜん無いんだな」
寂しそうに言うオバケ。
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