シナリオ「日シナの理緒ちゃん」12
1.
月夜のこと。空中で停止した物体から真下に光条が伸び、照らされた2人の女子高校生が吸い上げられていく――
理緒 「あ、あれ」
ののみ 「うにゃーっ」
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2.
明るい室内。床にへたり込む理緒とののみ。その周囲を銀色の服を着た男たちが囲んでいる。
泣くののみ。彼女をかばう理緒。
理緒 「私達を一体どうするつもりなの」
宇宙人α「驚かせて済まない。我々は地球で開発されたという、TRPGという物について調査をするため……」
宇宙人β「プレーヤー達を捕獲して標本にするべく……」
宇宙人γ「ルールブックとやらを買い占めて……」
宇宙人δ「我々の作成したシナリオを発表したくて……」
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3.
ののみ 「なんでそんなに、みなの言う事がばらばらなのね?」
宇宙人α「慌てていたせいで、事前ブリーフィングが不充分だったらしい」
頭を抱える宇宙人α。その肩をたたく理緒。
理緒 「ブリーフィングの結論を活用したいのなら、日シナのマスタリング講座がお勧めよ」
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4.
理緒 「60年の実績を誇る日シナのマスタリング講座なら、超一流の先生方が、プレーヤー達の個々の意見を引き出したり、総意をまとめさせたりする手順を懇切ていねいに指導してくださるのよ」
ののみ 「まさに、今みたいな状況を回避するためにあるような講座だにゃ」
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5.
理緒 「バインダー式で使いやすいテキストと、実用新案のマスタリング練習機を使えば、その時々の状況に即応して情報を持ちだすコツも身に付くしね」
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6.
理緒 「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級合格者の9割以上が日シナの出身なんですよ」
宇宙人α「ふむ。事情が許せば是非受講してみたいな」
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7.
理緒 「ところで、TRPGについて、具体的にはどのような情報が必要なのでしょうか」
宇宙人α「そうだな、知る限り最新の知識を裏付けるため、『D&D』の現行バージョンである所の……」
身を乗り出す理緒とののみ。
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8.
宇宙人α「『AD&D』について、詳しい話が聞きたい」
つんのめる理緒とののみ。
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9.
宇宙人β「いや、私はむしろ最近出たという『TORG』というシステムに興味がある」
宇宙人γ「『GURPS』というのも出ているそうだ。これの情報も持っているか?」
宇宙人δ「そう言えば、『T&T』の盗賊のレベル制限が無くなったというのは本当か?」
顔を見合わせる理緒とののみ。
理緒 「……なんだか情報が10年ばかり遅れているみたいなんですけど」
ののみ 「ウラシマ効果、って奴かにゅ」
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