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2003年12月号

シナリオ作成手順概要

特集: 単発記事
筆者: aspha

著者:aspha

 私がシナリオを作成する場合には、大抵以下のような手順で作成を行っている。今回はプレイヤーの意思選択が必要となるシナリオを念頭に置いて説明を行っている。

 1)シナリオイメージ・使用システムの決定
 2)題材探し
 3)題材の分解
 4)ストーリーラインの作成
 5)データカードの作成
 6)関係図の作成
 7)詳細データの作成

シナリオイメージ・使用システムの決定

 私がシナリオを作成する場合には、まず「どんな感じのシナリオにするか」「どのシステムを使用するか」を決定している。この2種のどちらが先に決定されるかは時と場合によって異なっている。例を挙げると

例:シナリオのイメージが先に決まっている場合
「ちょっとホラー物がしたいから、クトゥルフでシナリオを作ってみよう」
「久々に、ストレートなダンジョンものがしたい。D&D3eを使ってみよう」

例:使用するシステムが先に決まっている場合
「ブルー・プラネットでGMをすることになった。海洋冒険のハードSF仕立てで行ってみよう」

 といった感じである。

題材(元ネタ)探し

 シナリオのイメージが決まったら、次はだいたいの内容を考える。自分でストーリーなりトリックなりを考えても良いのだが、大抵の場合は作成時間の短縮のためにどこかから拝借(悪く言えばパクり)をしている。
 前述の「怖いホラー物」「海洋冒険のハードSF」であれば、本棚からそういったテーマのSF小説を取り出せば十分だろう。また、謎ときのあるシナリオにしたければ、ミステリ小説なども良い材料になる。

 以下の項では、「ファンタジー系ルールでダンジョンもの、プレイヤーは1人、プレロールド・キャラクター」という条件のもと、「題材:桃太郎」を例に作成を行う。

題材の分解

 この項で行うのは、前項で選んだ題材から、ストーリーの中心となっている要素だけを抜き出す作業である。登場人物は名前や容姿などをばっさり切って役割だけを残す。ストーリーは場面ごとに切った後に出来事だけを残す。基本的な作業はこの二つだけである。

例:ざっと切っただけでこの程度は出てくる。
・ストーリー要素
 「桃に入って桃太郎が流れてくる」
 「桃を切ると桃太郎が出てくる」
 「桃太郎、出陣」
 「犬と遭遇、交渉」
 「犬、仲間になる」
 「猿と遭遇、交渉」
 「猿、仲間になる」
 「雉と遭遇、交渉」
 「雉、仲間になる」
 「海岸に到着、船を探す」
 「鬼が島に到着」
 「島内部のダンジョンに突入(笑)」
 「鬼と戦闘」
 「帰還」

・人物
 「桃太郎」
 「おじいちゃん」「おばあちゃん」
 「犬」「猿」「雉」
 「鬼」

・マップデータ
 「鬼が島ダンジョン」

ストーリーラインの作成

 シナリオ中の、始点から終点までの流れを想定し、記述をする。ここで書いた流れはあくまでも「プレイヤー・キャラクターを誘導する際の参考」であり、何としてでもこの通りに動かさなければならないというわけではない。
 主ストーリーは、題材の分解で求めたストーリーの要素を並べることによって作成される状態空間である。各要素は有向のリンクで繋ぎ、プレイヤーの意思決定が無い場合には1出力、意思決定のある場合には多出力となる。また、判定の成否が必要な要素の場合も多出力となる。
 シナリオの始点は1つであるが、終点は複数あってもかまわない。すべての経路を1つの終点に収束させようとすれば、破綻する可能性がある。
 すべての選択・結果を考慮する必要はなく、だいたいの指針が決まっていればよい。プレイヤーの思考は無限にありうるのですべてをカバーすることはできない。確率的に高い数個をカバーしていれば十分である。
 最後に、一番誘導したい経路を選び、これを主ストーリーラインとする。セッション中には、誘導によってこの主ストーリーライン上を進ませること を目標とするとマスタリングの指針を明確にすることができる。おそらく、主ストーリーラインは題材と似たりよったりのものになるが気にする必要はない。

・例(一番左が主ストーリーライン)
 桃太郎が村を出る以前は、キャラクター設定に記入し、シナリオの始点は「桃太郎、出陣」とする。

「桃太郎、出陣」
 ↓
「犬と遭遇、交渉」-(成功)→「犬、仲間になる」
 ↓
「猿と遭遇、交渉」-(成功)→「猿、仲間になる」
 ↓
「雉と遭遇、交渉」-(成功)→「雉、仲間になる」
 ↓
「海岸に到着、船を探す」
 ↓
(以下略)

データカードの作成

 この項では、分解した要素を「データカード」に記入していく。データカードとは、その名のとおりゲーム内における要素の必要なデータを、1つの要素につき1枚のカードに書いたものである。
 データカードには、要素名、表情報、裏情報と他の要素との関係(リンク:<要素名>で表現)が書き込まれる。

例:
「桃太郎 ^能力:5/5/5/5 ^装備:名刀<鬼切丸>」
「鬼切丸 ^ダメージ:2D10 ^所持:<桃太郎>」
「鬼が島 ^存在:<ダンジョン>」
「鬼 ^能力:10/9/8/7 ^装備:<金棒> ^居住:<鬼が島> ^居場所:<ダンジョン>最下層」

関係図の作成

 関係図とは、データカード間の関係を1枚にまとめたものである。ストーリラインもこの関係図に含まれる。
 関係図の作成では、ストーリーラインを参照しながらストーリー以外の要素(人物やアイテム、組織)もリンク付けをする。具体的には、データカードに書かれたリンクをそのままストーリーラインに結びつけるだけで良い。

例:全体から「犬と遭遇、交渉」についてだけ取り出して見ると……
(前のストーリー要素から)
 ↓
「犬と遭遇、交渉」-(成功)→「犬、仲間になる」
 ^場所:<鬼が島への道(1)>
 ^登場:<犬>
 ↓
(次のストーリー要素へ)

詳細データの作成

 最後に、データカードに詳細なデータを書きこむ。キャラクター要素のデータカードであれば能力値やスキル、クラス、背景設定などを記入する。同様に、ダンジョンであればマップを、アイテムであればそのデータを記入する。
 ストーリー要素のデータカードには、そこで発生する可能性のあるイベント、判定等を、思いつく限り書き込んでいく。同時に描写等も書いておけばマスターをする場合に役に立つことが多い。


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