2003年12月号

シナリオメモの成長記録

特集: 単発記事
筆者: 逃亡者

前書き

この記事は、私が先日行った異能使いのオンラインセッションのシナリオを、どのような過程で作ったかの記録と解説です。

現状ではセッション進行と違い、シナリオをいかに作るかについては、手順がはっきりとルールブックに示されてはいません。そのため、どの程度作り込めばいいか不安になる人も多いと思います。そこで、素人の私がどのように考え、どの程度のメモでセッションに挑んでいるかを書いてみようと思います。

ただし、シナリオ作成の全てを書くと文章が非常に長くなる上に同じようなことの繰り返しになってしまいますのでオープニングシーン1人分ができるまでのみを書くことにします。

前提条件

シナリオを作る段階で私が置かれていた状況は、以下のようなものでした。

  IRCを使用したオンラインセッション
  プレイヤー及び各プレイヤーが使用するPCはすでにわかっている
  1つのシナリオは1日約2時間、これを3~4日にかけて行う

イメージのメモ

今回は初めて使うシステムだったこともあり、ルールブックにあるシナリオフックを使用することにしました。内容を詳しくは書きませんが、妖刀が連続殺人事件を起こすというシナリオフックです。

さて、私はシナリオを作る際にはセッションで表現したい一場面をイメージします。異能使いのシナリオフックを使った一場面は何かを考えると、妖刀との戦いが浮かんできました。戦いの場面と同時に妖刀を封印するために、妖刀を鞘に収めるという場面も浮かんできました。

イメージが浮かんできた段階でメモ帳を開き、

    妖刀との戦い
    妖刀は鞘に収めることで封印される

と書きます。 私の場合、イメージをすぐにメモにするという作業によってシナリオのイメージが膨らみ、足りないことが浮かんできます。そのため、シナリオ全体がはっきりしていない段階からメモを取るようにしています。

メモの追加1 イメージの位置情報の追加

次に私が考えたのは、この場面がシナリオのどの位置に当たるかです。

異能使いのシナリオの構成は、ハンドアウト、オープニング、ミドルフェイズ、クライマックスフェイズ、エンディングに分かれています。その4つの構成のうち、どこで〔*イメージのメモ〕で書き留めた場面が出てくるのかを考えるのです。

メモを見るとクライマックスにするのが一番単純に思えますのでクライマックスにすることにしました。

メモ帳にさらに追加します

    クライマックス
      妖刀との戦い
      妖刀は鞘に収めることで封印される

となります。 これでセッションでGMが導くべき最終目標が決まりました。

思考 メモの追加できず

目標が決まったところで私が考えることは、この目標にどうやってPCたちを導くかです。これもどこから決めるかなんて決めていません。

メモに書いたクライマックスを念頭に置きながら、出てきたイメージがハンドアウト、オープニング、ミドルフェイズのどこに位置するかを考えるのです。

今回は、クライマックスだけを見ているだけでは、なにも出てきませんでした。

PCにニックネームを付ける

そこで、クライマックス以外で既にわかっている情報である、PCの情報をそれぞれ見てみます。

私はキャラクターをシナリオと対比して見るときには、それぞれのキャラクターにニックネームというか、あだ名を付けます。 キャラクターシートでは、情報量が多すぎてイメージにつながりにくいからです。

たとえば、「妖精憑き探偵」といったように。 キャッチフレーズといった方がいいかもしれないですね。

メモの追加2 PCの役割

ニックネームとクライマックスのメモを見比べます。

妖精探偵はどうやってこの事件と係わるのか。 関わり方をニックネームの後に書き込んでいきます。

    妖精憑き探偵
      妖刀の封印を依頼される

こんな風になります。

メモの追加3 再びイメージの位置情報の追加

関わり方が決まったところで、メモに書いた関わり方のイメージが、シナリオのどの位置に出てくるのかを〔*メモの追加1〕と同じように考えます。

依頼ならオープニングとハンドアウトがいいと考えました。 場所が決まったところでまたメモの追加です。

    ハンドアウト
      妖精憑き探偵
      妖刀の封印を依頼される

    オープニング
      妖精憑き探偵
      妖刀の封印を依頼される

この時点ではハンドアウトとオープニングが同じ内容ですが、気にしません。 必要なのは、ここではこういうことをするという概略です。 詳細は後にゆっくりと書くのです。

メモの追加4 喚起されたイメージの追加

〔*メモの追加3〕だけでもいいのですが、もうちょっと凝ってみたいという欲が出てきました。

この章での追加は凝りたくなったからしたのであって、無理にしないといけないわけではありません。 ではどうしたかというと次のメモのようになります。

    オープニング
      妖精憑き探偵
      妖刀の封印を依頼される
      依頼した後に依頼人は死亡
      依頼人に封印するための鞘を託される

妖刀と連続殺人から依頼人の死亡のイメージが、封印の依頼から鞘が出て来ました。 妖精憑き探偵のオープニングが完成しました。

さて、作成過程の続きも書きたいのですが、実のところこれまでやったことと変わりません。 イメージを思いついたらメモを書き、そのイメージがシナリオのどこに当てはまるかを考える。つまったら書きためたメモを見返します。 イメージがふくらみ、つながっていくのは、自分で行うのは楽しいのですが、文章にすると作業の繰り返しです。そのため、ここでイメージをふくらませる過程の解説は終わりとします。

メモの追加5  セッションが区切られた後での情報の追加

メモの作成にはまだ続きがあります。

セッションを始めると、シナリオに書いていない状況が出て来ます。 そして〔*前提条件〕に書いたとおり、作成したシナリオを3~4日かけて遊びますから、実際にセッションを行った時に発生した状況を記録しておかないと忘れてしまいます。 そのため、1日のセッションが終わったら、出来事を書き留めておきます。

    オープニング
      妖精憑き探偵
      依頼人と会うために太色市民公園まで行く。
      血の臭いがする。
      そちらに行くと、若者が斬り殺されている。また、老人も倒れている。
      この若者は老人を助けようとして斬られた。その後、妖刀は鞘の力を受けて逃走
      老人は探偵を見ると、自分が依頼をした人物であると言って、ポリ袋いっぱいの現金と鞘を渡す。
      老人の依頼は、よみがえった妖刀を封印すること。そのためにはこの鞘が必要なのだという。
      刀を鞘に収めれば、封印ができるという。
      そこまで行ったところで事切れる。

そのあと、終わったシーンより後のシーンにも、今追加したメモに伴って出てきたイメージのメモを増やしていきます。 シナリオが終わる頃には、プレイ開始前よりも充実したメモになっていることでしょう。


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