シナリオ「日シナの理緒ちゃん」16
1.
殺風景な小部屋。数人の学生を前に椅子に座っている背広の男。彼の傍らに立つ理緒──
山地先生「我が校でも指折りの遅刻常習犯達に集まってもらっている。彼らに対して、どのように対処すれば良いのだろうねえ、風紀委員の椎名理緒くん」
理緒 「二度と遅刻をしないよう心を入れ替えるよう指導すべきだと思います、先生」
亜呂 「えー」
小野寺「……生徒会おーぼー」
2.
山地先生「よかろう。彼らが生活態度を改めるまで、とっくりと指導してくれ給え」
理緒 「はい。生徒の皆さんにも色々言い分はあるでしょうが、時間を守れないというのは罪悪であるという現実を、今回確実に理解して頂きます」
亜呂 「急にそんな事を言われてもー」
小野寺「……ヤなやつら」
3.
亜呂 「遅刻常習として一括りにされるのも、なんだかなーって気がするし。皆それぞれ理由があるんだと思うよー」
小野寺「彼の言う通りだ。原因が多様なのに簡単に対処できる筈がないじゃないか」
理緒 「遅刻グセ治すつもり全然なさそうね。それはそれとして、多岐に渡る問題点を把握して対処するなら、日シナのマスタリング講座がお勧めよ」
4.
亜呂 「なにゆえそこでゲームがでてくるのー?」
理緒 「60年の実績がある日シナのマスタリング講座なら、シナリオ作成やマスタリング中に発見される様々な問題点への対処方を、経験豊富な講師陣が親身になって指導して下さるのよ」
5.
理緒 「バインダー式のテキストと実用新案のマスタリング練習器を使えば、問題点を発生源まで遡って対処することも簡単。原因を理解してしまえば、恐いものなんて無いのよ」
小野寺「例えば、遅刻するに至る過程をきっちりと把握して、対処に動くこともできるわけだな」
6.
理緒 「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級合格者の実に9割以上が日シナの出身なんですって」
亜呂 「それほどの技術が必要な、そのTRPGっていうのは、どういうものなのー?」
7.
理緒 「という訳で、遅刻をしない学生を目指した指導の一環として『遅刻学生TRPG』というものに挑戦して頂きます」
亜呂 「あー、ゲームになってるんだー」
小野寺「どうしてそうなる。面倒臭いのは勘弁して欲しいな」
キャラクターシートを手にとる亜呂。文句を言いつつ筆記用具を取り出す小野寺。
山地先生「方法は何でもいいけど、下校時刻近いから適当で止めておくんだぞ」
戸口から上半身だけを覗かせて理緒に念を押す先生。
8.
7と同様に戸口から上半身だけを覗かせた先生。ただし、表情はひきつっている。
山地先生「……って言っておいた筈なのに、君たち今までずっと遊んでいたのかっ」
服や髪型がやや乱れた様子の、理緒たち。
理緒 「え? あれ? もう朝?」
小野寺「うわ、学校で夜を明かしてしまったっ」
亜呂 「しまったのー。僕、ゲームとか始めると時間わかんなくなっちゃうからー」
9.
小野寺「しかし、今日に限って言えば、学校に遅れるという事態の回避には成功したっ」
亜呂 「あ、なんだか少しだけ進歩したような気がするー」
理緒 「よし、じゃあ今晩も同じ手段で、遅刻の原因を突き止めるための努力を継続することに決定しまーす」
山地先生「いや、もう君は余計なことをしなくて良い……」