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2004年02月号

嬉し恥ずかし恋愛テク

特集: 単発記事
筆者: 鍼原神無

恋愛テクのリアルとプレイ

 TRPGで恋愛を扱ったセッションって、印象深くて、結構記憶に残るものです。
 プレイヤーもGMも、多少は気恥ずかしい気持ち、出ますから、思いっきりが大事で。
 その分、印象深いんです。

 GMしてるとき、仲間内ではリアルでもタラシとして知られるプレイヤーさんのPCから、女性NPCに粉かけられたことがあります。
 わー、これが噂のタラシ・テクなんだぁ、って感心しました(笑)。

 やっぱ、ちょっとトキメキましたけど、GMしながら、脳の後頭部付近にある(?)観察野でみてたら「キミのことを想ってるよ(こんなことを言うのはキミのことを想ってるからなんだよ)」って匂わせるセリフを、さり気に挟むのがコツみたいです。
 さり気だけど、いろんな言い方で、機会があるたびに挟むんです。

 で、TPOに応じて「想ってるからなんだよ」の強度を微妙に変え、押し付け感を感じさせないよう気をつけながらアピールを重ねるのが、手みたいです。とってもマメで、アプローチされる方にすると感動的です(笑)。
 ちょっと踏み外すと「鬱陶しい」になっちゃいますけど(爆)。さすがにリアルでも有名なプレイヤーさんは上手でした。

 プレイとしては、多少きざっぽいセリフが、わざとらしかったりクサイくらいでオッケー。
 本気で口説くわけではないし、ドラマ撮影でもないので、「今は口説きのプレイをしてるんだな」と同卓メンバーにわかるくらいで丁度よいんです。
 それより、セリフを言ってるときに照れとかを見せない方が大事で。そのためにも、割りとわざとらしいセリフ廻しにした方が、楽にやれるでしょう。

わざとらセリフのベーシック

 わざとらしくクサイくらいのセリフ廻しで、「ああ、今は◎◎のプレイをしてるんだな」と同卓メンバーにわかるくらいで丁度よい。
 これは恋愛に限らず、TRPGでセリフを使って演技するときのコツ(もしするんなら)です。
 ただし、わざとらしさやクサさでウケを採るのは第一目的ではない(笑)ので。さじ加減には気をつけて。

 はじめの内、同卓でギャグと受け止められたとしても、くじけず素知らぬ顔で(クサみの強度をコントロールながら)マメに反復していきましょう。
 やるんなら、相手が気づき反応するまで、照れをみせずにマメに反復、を信条にしましょう。
 お約束予想で、この程度言えば応じるはずだ、ではダメです。プレイでもリアルでも(笑)。

 わざとらしいセリフ廻しについては、TRPGでのセリフって、語尾や、語彙、間の取り方(詰め方)が主要なので。

 例えば、激しいセリフだからって、声量を大きく声を荒げるってのはちょっと違うはずです。舞台演劇ではないのだから。
 目の前の同卓メンバーに伝わればよくて、卓より遠くにはかえって伝わらない方がいい。
 そーゆー点で、いわゆる「熱い演技」ってのはTRPG向けではないです。(多分、「熱い演技」ってキーワードが一人歩きしてる内に、元々の意味から偏向しっちゃったんじゃないでしょうか? おそらく、最初に言われたのは「観てる人の魂に響くような演技」って含みだったと思うんですけど)

 声量とかに頼らず「なんとかではないかッ!」とか、「かんとかなのだッ!!」と語尾をつまらせ、少しだけ強めるとか。

 文字で書くとギャグみたいですけど、こーゆーのが、わざとらしかったりクサかったりのセリフ廻しなのでしょう。
 演技の考え方としては素朴なもんでしょうけど。別にプロ俳優のように演技自体を競うわけではないので、構いません。
 自然な演技とかを目指して、かえってわかりづらくなったら逆効果です。
 TRPGでの演技は、演技自体のスキルに俳優さんみたいに拘るより、違うきっかけで同じメッセージ(含み)の別バリエーションを発してくセンスとか、得意なキャラクター・タイプらしい語彙のストックとかから伸ばしてった方がいいです。

 生身の俳優さんが、ギャグ・マンガやコメディー・マンガ原作のドラマを演じることってありますよね。ちょっと古いけど「月曜ドラマランド」とか、「白鳥麗子」とか「音無可憐さん」とか「保健室のオバさん」とか。あーゆーのを参考にしちゃうといいと思います。
 もしくは、ギャグではないですけど、実写の「スケバン刑事」シリーズとか『ガラスの仮面』とか、レンタ・ビデオで研究してみるといいでしょう。CSで放映してたら要チェック☆
 マンガの原作を生身の役者さんが演じると、演技がオーバーになる傾向があるので、そこに注目(笑)です。

 繰り返すけど、クサさやわざとらしさでウケをとるのは、この場合の第一目的ではないので、要注意。
 セッション現場では、システムのジャンルや、セッション・メンバーの反応をみて適宜さじ加減を調整してゆきましょう。

恋愛テクの応用編

 純然たる恋愛とはちょっと違いますけど。「深淵」の貴婦人をプレイして、夫に生け贄にされそうになったけど、熱愛してることをたてにとって、受け身の立場から精神面で反撃(笑)したことがあります。

 GMさんは何度も遊ばせてもらってる人で、PC候補に貴婦人入れて来るときって、なぜか、たいてい生け贄候補なんですよね(笑)。
 問題のセッションでも、途中から「今回アタシがやってる貴婦人を生け贄にしようとしてるの、旦那のNPCなのね」と、あたりがつきました。
 旦那が陰謀主って線に賭けて、下手に陰謀から逃れようとしないことにしたのはセッション中盤の頃。
 熱愛してるのをたてに精神攻撃、あわよくば羞恥プレイを加えてやろう、と腹をくくったのでした。
 以前、同じGMさんの別の「深淵」セッションで、生け贄にされそうになって怖い思いをしたときのお返しって目論見です。
 あまり思うがままにされても、クライマックスでの行動が制限されすぎるでしょうから、一端PCのガードを固め、徐々に崩されながらも陰謀の内に入らせていきました。

 やはり旦那が陰謀主だったクライマックスで、貴婦人はただちに「私はあなたを信じてます」モードの作戦行動へ(笑)。基本戦術は、「生け贄にすることが王(領主)としてなすべきことなら、さぁどうぞ」です。
 貴婦人らしく、開き直った感じにならないようにセリフや描写を工夫しました。

 演技の含みとしては、こんなに信じてる奥さん生け贄にするなんて、あんた人として恥ずかしくないの? の羞恥攻撃。
 PCの体を張った、命懸けのキャラクター・プレイ(笑)です。

 PC生き延びても3~5回くらい、死ぬんならドラマチックにの「深淵」ならではの遊び方でしょう。
(余談ですけど「深淵」だからって死ねばいいってもんじゃなくて、這いずり回って生き延びた方がドラマチックなこともあり。とは書いときます)

旦那@NPC「お前の、お前の、そういう取り澄ましたところが、俺には堪らんのだぁぁぁぁッ」だって(笑)。
 ふふふ、勝った……てか、主要NPCを詰めた(笑)。

 結末では、夫婦がそれぞれに死にました。
 瀕死で夫の死体に手を差し伸べようとして、判定。ここまで持って来れれば、成功しても失敗しても、結末の物語内容がどう転ぶか、かえって楽しみな判定です。
 プレイヤーとしては、一応、最後の判定に、残ってたリソースを全部つぎ込んだはず、と記憶してます。

 これこそ、物語性重視のセッションってもののはずで。物語性重視と言いいつつ、予定調和を強要するセッションは、実は物語ってメディアを誤解してるんだと思います。
 「深淵」でドラマチックな展開を追及する、ってGMさんのセンスを信頼したからやったプレイですけど。これが、バッサリ生け贄にした方がドラマチック、なんてセンスのGMさんだったら、アタシのプレイは読みを外した内容になってたでしょう。
 マイキャラのストーリー・ラインは脇に行って、別の物語が紡がれたことでしょう、って意味ですけど。
 読みが外れてたら、渋い脇役を目指してプレイしてただけのお話。なんにしろ、このときは同卓メンバーにウケたもん勝ち状態でした。

 この時のプレイの工夫も、キャラクター演技の含みをどーやって、卓のメンバーに了解してもらうか。
 やはり、わざとらしいくらいのセリフ廻しで「私はあなたを信じてます」を表現。きっかけを掴んでは、マメに繰り返し、同じ意味のメッセージを別の表現で伝えてくのも、噂のタラシ・テク(笑)と一緒です。
 このケースでは、相手のNPCには押し付けがましくとられたとしても、第三者的視点からは「奥さん旦那を愛してるんだねぇ」って思われればOK(爆)。ですので、さじ加減はかえって楽でした(特殊事例ですけどね)。

 ドラマですから、「信じてる」って戦術を決めたら信じさせるんです。とことん裏切られたら、旦那の可能性を信じさせる。
 TRPGの1セッションで扱える物語は、小説や映画で言ったら、長めの短編~中編程度のボリュームでしょうから。あまり複雑な心理変化の表現には、実は向きません。
 セッションのどこまでで基本戦術を決めて、決めた後は基本のバリエーション表現をどれだけ繰り出せるかが、読みとセンスの勝負になります。

 このGMさんの「深淵」では、セリフを言う代わりに、カードの語り部欄をアイ・コンタクトでの異心伝心に使う、ハウス処理「テレパシー攻撃(仮称)」ってのをやってまして。
 これ、選びに選んだ語り部欄を読みあげながら、相手に渡すと場にウケます(笑)。
 例えば、カードを読み上げ「という気持ちを込めた視線を旦那に向けながら無言で跪く貴婦人、そのとき彼女の瞳には、一筋の涙が」とか。この無言プレイ(PCは無言)も、プレイヤー・メンバーにバカウケした覚えがあります。(GMさんは苦笑してたかな?)

 クライマックスに備え、中盤から判定は多少犠牲にしてため込んだ、使えそうなカードで波状攻撃をしかけた羞恥プレイだったのでした。
 TRPGの演技は、恋愛に限らず、ゲームプレイを活用できた方が“強い”わけです。

恋愛を、楽に楽しむエトセトラ

 思うに、恋愛を扱うセッションは、システム選んだ方が楽に楽しめるのでしょうね。
 交渉系の判定が細かく整備されてるとか。
 前記の深淵カードみたいにロールプレイのサポートに使えるガジェットがあるとか(事例はハウス処理でしたけど)。
 後、縁故(「深淵」、「ブルーローズ」)とか絆(「ビースト・バインド」)みたいに対人関係や執着心を表現し、関連判定にも使える数値があるとか。

 この辺のサポートを活用しながら、できるだけ照れを出さずにプレイしてけば、比較的楽に楽しめるでしょう。
 普通はどうしても照れは出るでしょうけど、なんとか捌いてプレイヤー発言のときだけに押さえるとか。

 かつ、その上で、TRPGでは、キャラクター間の恋愛関係は、何か他のプロット(ストーリー・ライン)の彩りとして絡めてく方が楽に楽しめるんじゃないかな? セッション展開のスパイスに使うって感じで。
 お約束プレイになりすぎて、退屈になりすぎないさじ加減で、仮想のドキドキ感を楽しみたいですね。

 恋愛ドラマの醍醐味って、おそらく、人間関係が流動化するとこから生じるはずなので。
 人間関係が流動化すると、それに応じてプロット展開の可能性が増えてくはずです。
 だから恋愛をメインにしたTRPGでは、セッションの難易度があがるでしょう。
 お約束プレイに頼れば難易度上昇に歯止めをかけられますけど、予定調和に傾く危険も増します。予定調和は、展開や結末の不定性を前提に楽しむTRPGとは、基本的には相容れません。
(物語展開の可能性が錯乱しすぎるときに、カウンター・ベクトルに使うといいくらいのはずです)

 いろんな意見があるでしょうけど。アタシは、キャンペーンで恋愛関係が生じた場合は、3~4回くらいかけてカップルに関る人間関係流動化に1段落つけさせよう、くらいの見込みペースがよいように思います。

 アプローチとしては、話題にあげた夫婦とか、よくあるパターンだと、幼なじみとか、師弟関係とか、友人の血縁とか、あらかじめ人間関係が成り立ってるって設定のとこに、彩りとして流動化のモメントを加えてくって攻め口がいいんじゃないかな。
 比較的、遊び易いだろうと思います。
 GMの方は、恋愛ドラマっぽいハプニングを、いかに意外感を伴わせて投入するか、がセンスの見せ所になるでしょう。
 ハプニングの布石を打つマスタリング・テクには、できるだけ早い時期に、周辺キャラにいろいろ食い違った憶測を誘導してく、などが考えられると思います。アニメ『機動警察パトレイバー』TV版の名作、『太田惑いの午後』などが、参考にできます。

 恋愛関係がプレイヤー・レベルで認知されたら、当事者キャラ周辺で、他のPCたちも流動化してく人間関係にワタワタさせてけばいいと思います。恋愛ドラマが組み込まれた物語が、自然な感じで展開してくでしょうから。
 小説版「央華封神」に登場する律花女仙のように、パーティーのお姉さん役で恋愛の先まで見通す役柄のPCが出てもいいんですけど。出なくてもいい。
 PCみんながその役をやりたがると、せっかくの恋愛ドラマのドキドキ感が薄れるかもしれませんから。先を見通す面倒見役はNPCに預けちゃうつもりで、PCはそれぞれにワタワタさせてく、くらいで構わないでしょう。

 あ、後「CLAMP学園」みたいな、比較的、日常感に近いワールドで、誰か(PCでもNPCでも)に届けられた差出人不明のラブレターの出所を探れッ、なんてのも楽しめそうです。
 そう言えば「蓬莱学園」小説版の短編に、そんな話がありましたね。

 実際は、PCが恋愛に絡まなくても、謎のラブレターをきっかけにPCをワタワタさせてくと、仮想のドキドキ感を味わえるかもしれません。
 「NPCに謎のラブレターがッ」だと、GMに偏って負担が増す可能性がありますけど(笑)。


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