2004年02月号

D&D世界での恋愛

特集: ダンジョンズ&ドラゴンズであれこれ
筆者: 死せる詩人

 結論から先に言うと、D&D3Eの住人の内ブルジョワジィと呼べる人々の間には自然な恋愛は存在しない。その事について今回は簡単に説明したい。

恋愛の定義

 論旨を明確にする為にも、まず本稿に於ける恋愛の定義を確認したい。あくまで、これは本稿内部でのローカルな定義であり、私は一般論として語っている訳ではない事にくれぐれも注意して頂きたい。という事で、以下の様に定義する。

 恋愛とは、異なるジェンダを持つ2つの知的な個性が、御互いの特徴を認め、それを慕い、精神的・物理的・時間的・空間的な様々な事柄を共有したいと考える行為。

ブルジョワジィ

 ではブルジョワジィとは何だろうか。中学校時代に歴史の授業で習った記憶があるが、そんなものはD&D世界では通用しない事が多い。面倒なので、趣味に興じる時間や金銭的余裕のある人々の集合の事だと思って頂きたい。ちなみに冒険者もここに入る(日用的な生活用品と冒険者の装備の金額の差を比べてみるとよい)。

ほれ薬

 D&D世界には、れっきとした「ほれ薬」が存在する。日本語版・英語版ともにダンジョンマスターズ・ガイド(Dunegon Masters Guide)の191ページにポーション・オブ・ラヴ(Potion of Love)という名で掲載されているのが、それだ。

 さて、その効果だが、簡単に説明すると「このポーションを飲みセーヴィング・スローに失敗した生物は、直後に始めて見た異性を永久に熱愛する」となる。果してその価格はと言えば300gp。誤字では無い。30,000gpでも3,000gpでも無く 300gpである。ロングソードが15gp、乗用馬1頭200gpの世界である。平均的な2レベル冒険者の所有財産は900gpの世界である。そしてルールを杓子定規に解釈する限り、人口が1,000人もいる都市ならば300gp程度のアイテムは魔法、非魔法を問わず誰にでも購入できるのだ。

恋愛の実体

 こういった物が存在する世界での恋愛とは、どういう現象なのだろうか。少し想像力を働かせてみよう。

 まず、ある程度裕福な家庭で育った人々の大半は、将来の為に小さい頃から貯金を始める。そして300gp貯まるや否やポーション屋でほれ薬を購入し、これを大切に保管する。
 そして、好きな異性が表われると、どうすればほれ薬だと気が付かれずに、飲ませる事ができるか考え、綿密にデートの計画を立てる。しかし自宅でお茶をする等の方法は、既に古典的であり警戒されてしまうので、恐らくオープンカフェのような小洒落た場所が好まれるだろう。
 そうして相手の前にコーヒーか何かを装って、さりげなくほれ薬が出される。相手も、警戒しているだろうから、失礼にならないよう気を付けつつ、こっそりと匂いを確認したりする事になるだろう。
 このような生き馬の目を抜くデートを、幾度となく繰り広げ、ほれ薬の力を持って愛する人物を得るのである。

 きっと結婚式では、誓いの言葉の後、互いにほれ薬を飲み見つめ合う儀式が段取りに含まれるだろう。その時、間違って参列者を見てしまった場合に供えて、 式場の片隅にはディスペル・マジックをする為の魔法使いが待機しているものと思われる。

 D&D世界に於ける恋愛というのは斯樣な現象だと推測される。どうやら熾烈な戦いを行なっているのは冒険者だけでは無さそうだ。


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