ホビージャパンのd20シナリオ集2『A Seven-game Match』の感想
総評としては、『ア・セブン・ゲーム・マッチ』は非常に良く出来たシナリオ集と言えます。
DMとしてもシナリオ作成者としても参考になる部分が多く、PLに対してもプレイしながらゲームを覚えてもらうように意識していることが伺えます。このシナリオ集の全てのシナリオをプレイしたなら、DMもPLも非常に多くの経験を得るでしょう。
今回は白地図が必要なシナリオが多いため、前回のシナリオ集と同様に白地図サービスがあると嬉しいですね。前回と違って、有ると便利、ではなく無いと厳しい、といった感じです。
今回も、7つのシナリオそれぞれにLV調整や人数調整のアドバイスだけでなくDMへのアドバイスが付けられているのも高く評価できます。
また、サプリメントの活用という側面から見てもこのシナリオ集は評価が出来ます。シナリオ1では 「挑戦の書」、シナリオ6では 「次元界の書」と言うように、既存サプリメントの実際の使用例を示してくれているのが購入者には一層嬉しいですね。
さらに、シナリオのほかに町の設定と3.5版ルールへの対応が追加されています。このように単なるシナリオ集ではない盛りだくさんの内容となっているう えに、町の追加設定募集も行われていますので今後のD&D展開に参加することも可能です。まさにインタラクティブな展開ですね。
ネタバレにならない範囲で各シナリオを簡単に紹介していきましょう。
1:使い魔を探せ! 1LV用
「挑戦の書」 の最初の題材をシナリオ化しています。DMにとってこの手順は非常に参考になるでしょう。PLとしてプレイしても、普段あまり使わないルールを使うことになりますから得るものが多いでしょう。
非常に簡単に楽しめる手軽な内容だと思います。
2:新人冒険者養成講座 1LV用
このシナリオでは、装備品選択や情報収集といったダンジョン突入前の作業から、ダンジョン突入後の戦術やかけ引きなど、冒険者に必要な準備と心がまえとテクニックを全て教えてくれます ……非常にD&Dらしく。
シナリオの調整の項によると、ほとんど手を加えずに7~8LV用シナリオとしてプレイ可能だそうです。言い換えれば、力押しをすると高いLVが必要だと言うことです。もしかすると、このシナリオの本当の題名は 「新人プレイヤー養成講座」 なのかも知れません。
3:スフィアパイクの扉 3LV用
2作ある 「シナリオコンテスト入賞作品」 の1つです。このシナリオコンテストは募集時間が非常に短かったのですが、2作とも巧く作られていて感心させられました。
シナリオ内容はオーソドックスですが、戦闘だけに終始しない内容になっていて、D&Dでは不足しがちなロールプレイ部分も満足できるでしょう。 収録された7作品のなかでもっともクセのない、良い意味で素直なシナリオだと思います。アマチュア作品に多い 「呪文対策漏れ」 も抜かりなくフォローされ、モンスターも上手に選ばれていて好印象です。
4:狂戦士の塔 4LV用
男のロマンを駆り立てる、死亡遊戯なシナリオです。あ、ネタバレしちゃったかな(^^;
激しい戦闘が繰り返されるシナリオですが、戦闘以外の工夫もあり、人情話? もあり、単調なプレイにはならないと思います。
戦術や全滅時の対応など、様々なアドバイスが書かれていますが実際には全滅することはあまり無いでしょう。
5:幽霊の正体見たり 5LV用
今回のシナリオ集の中で最もテクニカルなシナリオです。
DMは事前準備としてNPCの把握に努めなければなりませんし、PCも状況を素早く正しく把握する必要があるでしょう。
テクニカルなシナリオなのでネタバレせずに書ける部分が少ないのですが……ええと、状況設定の部分が詳しく書かれていますのでDMとしては参考にしやす いと思います。PLとしても、魔法的な情報収集に触れるチャンスですので学べる部分は多いと思います。普通にプレイしていると、情報収集系の魔法はもう少 し先のLVですので。
6:陰険なる錬金術師の岩窟 5LV用
ネタバレになりますが、「次元界の書」 を活用したプレイになります。
「次元界の書」を本格的に扱うためのチュートリアル (練習) 用と考えるのが良いかもしれません。
特殊な状況に置かれるせいか、注意すべき点は移動や視界などに重点が置かれますし、戦闘バランスも普通であれば簡単な部類に入るものです。
このシナリオもクセの少ない素材的な側面を持っているように感じました。プレイナーチャンピオンを目指している人が居るならぜひ活用しましょう。
7:竜の花嫁
「シナリオコンテスト入賞作品」 のもう片方です。
あの短い募集期間内によくこれだけボリュームの有るシナリオを作れたものだと素直に驚いています。マップも広い上に内容も濃いものになっていて、シナリオ集の最後を飾るに相応しい内容と言えるでしょう。
D&Dの伝統的なダンジョンシナリオであり、ダンジョン内部の人間関係を把握することが重要なポイントになるでしょう。力押しだけでも工夫だけでも攻略は難しく、力と知恵を出し切る必要があります。
ネタバレを避けているために、激しいパワーシナリオのように見えてしまいますが、お遊びと言うかなんというか、遊び心を満たす部分もちゃんと用意されていますのでご安心ください。
このシナリオの作者の方は (テーブルトーク系ではないようですが) ライターさんで、さすがに上手い作りになっています。戦闘以外も期待していいと思いますよ。
☆:町の設定 トーチ・ポート
良く出来た町で、DMとしての使い勝手が良いように作られています。マップもイメージが良く伝わる秀作で、3ページしか取り扱われていないのが残念です。
対照的な人物や状況を巧く混ぜてあり、シナリオフックを作りやすく、また、PCの個人的な目的 (名声や仕官など) も達成させやすいのではないでしょうか。
HJはこの町の設定を正式に募集していて、第一次締め切りは 2005/1/31 です。
募集要項を見るにHJはかなり乗り気なようですので、応募されるのも良いかと思われます。発表はぎゃざ誌とHP上で随時ということですから、本気度が高いように思えます。
最後に
レビューは以上です。
総評として書いたように、非常に良く出来たシナリオ集と言えます。
価格以上の価値があるでしょう。
『ア・セブン・ゲーム・マッチ』
追伸
このレビューを書いている最中に、3.5版への版上げ情報が流れてきました。
このシナリオ集のシナリオは全て3.5版対応可能なように差分データが掲載されています。商品情報が妙に遅かったり内容に関して出し惜しみ気味だったのは、おそらく3.5対応との絡みだったのでしょう。