2003年05月号

シナリオ「日シナの理緒ちゃん」7

特集: 日シナの理緒ちゃん
筆者: ちた・まみむめ

1.

 カフェテリアで、私服の理緒に、普段着の壮年がメモを手渡す――

英輔「理緒ちゃんは、こういうのに興味あるのかな。うちの学生の間で回覧されてたんだ」
理緒「? 拝見します」

——-

2.

メモの内容を読み上げる理緒。

理緒「『ゼラチンキューブ、2歩右、アンバーハルク、錆の怪物、マインドフレア、探す、シュリーカー』
    ……D&Dのモンスターかな」
英輔「どんな意味があるのか、説明できないかな」

——- 3.

男が一人、トレイを持って通りすがり、英輔に話しかける。彼に会釈する理緒。

正義「やあ。娘さん?」
英輔「いや、ある種のゲームに関する尊敬すべき専門家だよ」
理緒「専門家だなんて。60年の実績がある日シナのマスタリング講座で学んだ程度ですよ」

——- 4.

理緒「日シナのマスタリング講座の超一流の先生方によれば、演繹と帰納を繰り返すシナリオ作成は、推理力を鍛えるのに適しているし」
英輔「推理力ときたか」

——-

5.

理緒「バインダー式で扱いやすいテキストと、実用新案のマスタリング練習機があれば、実地の経験と同じように技術を身に付けることが出きるわ」
英輔「ほら、頼りになりそうでしょう」

笑う正義。

——-

6.

理緒「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級の合格者の9割以上が、日シナの出身なんですって」
正義「では専門家の意見を拝聴しようか。メモからどんな事が判る?」

——-

7.

話し始める理緒。男たちは黙って聞いている。

理緒「D&Dか、それを題材にしたパソコンゲームに関係していると思うんですけど、モンスターの名前を適当に並べているだけみたいだし、何か意味があるとすると……」

——-

8.

理緒「『b2lURhsF』っていう、何かのパスワードを連絡してた、ってのはどうでしょう」
正義「……どこからそんな文字列が出たの」
理緒「こじつけですけど、nethackというゲームの表示やコマンドを当てはめてみたんです」


——-

9.

慌て始める男2人。

英輔「うん、それはパスワードだ。実にまずい……ちょっと、電算に連絡いれてくる」
正義「一体なぜ、学生がこれを知ってるんだ」


頭をかく理緒。

理緒「お役に立てた、のかなあ」

——-


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