シナリオ「日シナの理緒ちゃん」7
1.
カフェテリアで、私服の理緒に、普段着の壮年がメモを手渡す――
英輔「理緒ちゃんは、こういうのに興味あるのかな。うちの学生の間で回覧されてたんだ」
理緒「? 拝見します」
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2.
メモの内容を読み上げる理緒。
理緒「『ゼラチンキューブ、2歩右、アンバーハルク、錆の怪物、マインドフレア、探す、シュリーカー』
……D&Dのモンスターかな」
英輔「どんな意味があるのか、説明できないかな」
——- 3.
男が一人、トレイを持って通りすがり、英輔に話しかける。彼に会釈する理緒。
正義「やあ。娘さん?」
英輔「いや、ある種のゲームに関する尊敬すべき専門家だよ」
理緒「専門家だなんて。60年の実績がある日シナのマスタリング講座で学んだ程度ですよ」
——- 4.
理緒「日シナのマスタリング講座の超一流の先生方によれば、演繹と帰納を繰り返すシナリオ作成は、推理力を鍛えるのに適しているし」
英輔「推理力ときたか」
——-
5.
理緒「バインダー式で扱いやすいテキストと、実用新案のマスタリング練習機があれば、実地の経験と同じように技術を身に付けることが出きるわ」
英輔「ほら、頼りになりそうでしょう」
笑う正義。
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6.
理緒「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級の合格者の9割以上が、日シナの出身なんですって」
正義「では専門家の意見を拝聴しようか。メモからどんな事が判る?」
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7.
話し始める理緒。男たちは黙って聞いている。
理緒「D&Dか、それを題材にしたパソコンゲームに関係していると思うんですけど、モンスターの名前を適当に並べているだけみたいだし、何か意味があるとすると……」
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8.
理緒「『b2lURhsF』っていう、何かのパスワードを連絡してた、ってのはどうでしょう」
正義「……どこからそんな文字列が出たの」
理緒「こじつけですけど、nethackというゲームの表示やコマンドを当てはめてみたんです」
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9.
慌て始める男2人。
英輔「うん、それはパスワードだ。実にまずい……ちょっと、電算に連絡いれてくる」
正義「一体なぜ、学生がこれを知ってるんだ」
頭をかく理緒。
理緒「お役に立てた、のかなあ」
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