食う
はたしてファイターは鎧(フルプレートだ、もちろん)を着用したままで寝る事が可能か? この設問に対し、一晩中、熱く語り合った時代があった。 ……今にして思えば馬鹿か阿呆かと当時の自分を問いつめたい気分であるが、これはかなり切実な問題であったのだ。 食欲、性欲、睡眠欲。人間の三大欲求の中でしんぼうたまらんモノはどれかといえば、これはもう誰が何と言おうが睡眠欲で、しかも寝ている時であれば子供でも大人を殺せるぐらい無防備になる。もちろん、交代で不寝番を立てるのが当然であるが、いざ夜襲があって起きた時に鎧を着用しているかいないかでは、継戦能力に格段の差が付く。もちろん全身を覆う金属鎧を敵が襲ってきている中で着用するのは不可能であるからして、寝る時に着用したまま寝る事が可能か否かは(PCの)生死をかけた重大問題であったのだ。 睡眠欲の方は、まあこうした形で激しい(そしてムダな)論争が行われていたのであるが、それと負けず劣らず問題であったのが食欲であった。今回はその食欲に絡んだ、とある冒険の話をしよう。 ざざーん(波の音) 「おお、水平線が見える」 「船は?」 「見えん」 そう。それはとある船旅での出来事であった。ゲーム開始より五分、マスターは宣言した。 「嵐だ。君たちの船は沈没した」 「過去形かいっ」 「違う。過去完了形だ」 「よけい悪いわっ」 「異議ある者はこの戦い終了後、法廷に申し立てい!」 「キシリア閣下か、おまいは」 そういえば当時はZだかZZだかのガンダムが放映されていたような気がする。 「で、戦況は?」 「ゲルググ、ドムの動きが目立たぬようだが」 「アニメネタはもうええっちゅうねん」 オタクの会話が横道にそれるのはいつもの事である。 [...]