2003年04月号

『混ぜるな、危険!』

特集: 単発記事
筆者: 志名波諸智

 TRPGが好きである。
 TRPGが好きで好きでたまらないので、マンネリに陥ったことなどないのである。
 一つのシステムに飽きれば別のシステムで遊べば良いのであって、我が家には一度も遊ばれたことのないシステムが未だ幾つも待機中なのである。
 なのに、今月号の特集は「マンネリ対策」。実に困ってしまうのである。
 そういう訳で、これまで遊んだセッションの中で一番風変わり(工夫がなされていた)だった経験のことについて書いてみることにする。役に立つかどうかは保証の限りではない。
 それは、およそ10年ほど以前のこと。
 とあるコンベンションで行われたセッションであった。

 時は宇宙世紀0079年。
 人類の半数を死に至らしめた一年戦争も末期に近づきつつあった。
 地球上よりジオン軍はほぼ一掃され、主戦場がソロモンやア・バオア・クーに移りつつあるなか、地球圏を防衛する少数のパトロール部隊が編成されていた。
 主戦場からは離れた比較的平和な日常。しかし、それは唐突な警報によって破られた。
「ザンジバル2隻が接近中!」
「何故、気づかなかった! パトロール小隊、総員ジムに搭乗して出撃せよ」
 ザンジバルの1隻からはケンプファーが展開。小隊と交戦状態に突入する。
「1隻? もう1隻は?」
「地球突入軌道のままだね。ケンプファーを展開した方は軌道を変更しつつある」
「くそう、逃げられる。他の部隊は?」
「間に合わないようだね」
「なんて、お約束なんだ!」
 ケンプファーは全て撃墜したものの、ザンジバル2隻には逃げられてしまった。しかも、1隻は地球への侵入を許してしまったのである。
「君の小隊に追撃命令が下りたよ」
「ぬう。断れんなあ。で、連中は地球のどの辺りに降りたんですか?」
「(世界地図を広げつつ)ここだね」
「南太平洋ですか? 何もなさそうだけど、何故こんな所に?」
 追撃小隊は直ちに地球に降り、ジャブローにて装備を整え現場に急行した。
「泥土を積み上げたような島があるね。ザンジバルが半ば埋もれるような感じで着陸している」
 追撃小隊は潜入部隊の消息および目的を確認する為、泥土の島に上陸した。
 島には巨石を組み上げて作られた都市か神殿を思わせる遺跡が広がっていた。立ち並ぶ石柱はジムの身の丈よりはるかに高く、悪夢を思わせるような彫刻が隅々まで刻まれていた。不思議なことにこの遺跡を長時間眺めていると眩暈がしてくるのであった。
 突然、追撃部隊の前方から絶叫と巨大な破壊音が響き渡った。
「……どうする?」
「行きたくないけど行くしかないでしょ」
 急進した追撃部隊が目撃したのは、巨大な影に破壊されていくズゴック小隊であった。その影は、巨大な頭足類とドラゴンと人間とを掛け合わせたような姿をしていた。
「な、なんだコレは」
 追撃部隊の中でも、目撃した怪物のあまりのおぞましさに発狂、突撃するものが出始めた。しかし、巨大な影は信じられない怪力を持って次々とモビルスーツを一方的に破壊していく。
「わああ、助けて、助けてください、隊長!」
「くそう、こんなバケモノを外に出すわけにはいかない!」
 辛うじて正気を保った小隊長はジャブローに連絡。ジャブローは直ちにピンポイントでの核攻撃を決定した。
「つーことは、連邦内部にもコレについて知っている奴がいるっつーことか」
 追撃部隊は直ちに撤退を開始。しかし、ミサイル到着までこのバケモノをここに押さえておく必要があった。 
「総員、後退しつつビームスプレーガンを斉射! 奴をここに釘付けにする!」

 と、まあ、大体こんな感じのセッションだったのである。題して「クトゥルフ・UC」。
 使用システムは、『ガンダム・センチネル』(MS戦闘部分)と『クトゥルフの呼び声』(PC管理)だった筈である。システムの違いの為に矛盾は色々と出たが、心を広くもてば、それもかえって愉快であった。
 普通のゲームに(万が一)飽きるようなことがあれば、偶にはこういうシステム混合も面白いのではないだろうか。いや、保証の限りではないが。


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