シナリオ「日シナの理緒ちゃん」6
1.
暗闇の中、頭を外したマグライトの光が、地面に座り込んだ男たちの顔を照らしている。そこへ理緒が戻ってくる――
理緒「どこも埋まってて、出られそうにありません」
衛「急に崩れやがって」
孝夫「この後の予定、どうするんだよ」
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2.
理緒「外と連絡はとれます。2~3時間で、救出してもらえるそうですよ」
衛「その間カンヅメかよ。食いもんも無しで」
孝夫「ノートの1つも持ってきてりゃ、仕事が出来たのに」
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3.
理緒「出られるまで、TRPGで時間を潰しましょうか。これでも私は60年の実績がある日シナのマスタリング講座を受けていて……」
衛「ゲームに興味はないよ」
理緒「……そうですか」
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4.
衛「ああ、でもマスタリング講座とやらには興味があるな。どういうもの?」
理緒「どうも。日シナのマスタリング講座は、超一流の先生方の親切ていねいなご指導を核にして――」
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5.
理緒「バインダー式のテキストと実用新案のマスタリング練習機を使って、ゲームマスターに必要な技能を会得するための講座です」
衛「確立された技術があるんだな」
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6.
理緒「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級の合格者の9割以上が、日シナの出身なんですよ」
孝夫「どうだろう。ただ待つのも退屈だし、試しにTRPGでもやってみないか」
衛「気が進まんな」
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7.
「4時間後」のテロップ。一転、部屋が明るくなり、数人の男女が合流してくる――
男「衛さん、ご無事でしたか」
別の男「さぞ心細かったでしょう」
衛「いやなに。TRPGをしていたからね。有意義な時間を過ごすことが出来たよ」
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8.
男「閉じ込められていた間、心は別の世界で楽しんでいた、という訳ですか」
衛「んー。ちょっと、違うな」
孝夫「違うという事はないだろう」
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9.
衛「ここに閉じ込められてたのは、通りすがりの名も無い盗賊と戦士だったって事さ、俺なんかじゃなくて。はっはっは」
感心する孝夫たち。ただ一人あいまいに笑う理緒。
理緒「……私は度外視なのね。良いけどさ」
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