ボーイスカウトでのキャンプ経験
●はじめに
D&D3E(以下3E)に限らず、ファンタジィ系のTRPGをプレイしていると、キャラクタが野宿をするというのは良くあることだ思います。しかしながら、大抵の人は野宿の経験などは無く、野営というものを想像でしか捉えることができないのでは無いでしょうか。
幸い僕は小学校1年生から6年生までの6年間ボーイスカウト(1・2年生はテンダースカウト、3・4・5年生はカブスカウトと呼ばれ、実際にボーイスカ ウトと呼ばれるのは小学校6年生と中学校1・2・3年生ですが)をやっていたので何度もキャンプをして野外での生活を経験したことがあります。
既に10年以上も前のことなので、記憶は曖昧ですが実際の野営がどのようなものだったかというのを、ご紹介してみたいと思います。
●班構成/Party Member
僕の所属していたボーイスカウトO第1団は全員で30人弱の団体でした。その中で4つの班に分かれ、それぞれの人数は6~8人です。
僕の所属するタイガー班は最も人数の多い班で、8人でした。キャンプにもこの人数で行くことになります。またそれぞれの班には班長と副班長がいて、原則的に最年長の人間がその任務を務めることになります。
●装備品/Adventure Gear
ボーイスカウトがキャンプに行く場合の個々人装備品は、おおよそ以下のような物になります。
- リュック(40~60リットル程度の容積)
- 寝袋(大抵はスリーシーズン仕様の比較的分厚い物)
- 水筒(1~2リットル)
- 食器(飯盒、皿、椀、ナイフ、フォーク、コップ、大抵はアルミかチタン)
- 着替え(どの季節でも長袖長ズボン及び上着は必須)
- 懐中電灯、ランプ
- 大量のマッチ(300ミリリットル程度の瓶に乾燥剤と共に密閉する)
- 新聞紙(3日分程度)
- ナイフ(大小)、その他大工道具
- ロープ
- ビニールシート
- ポンチョ(雨合羽)
- 食料(インスタントラーメンや缶詰)
- 笛
この他に班全体で必要な物があります。
- テント(4人用を2つ)
- 背負子(テントを背負うため)
- 巨大なビニールシート(花見とかで使うあれ)
- ゴミ袋
- ポリタンク2つ(灯油なんかを入れる20リットルの物)
- 大量の煙草(2カートン)
- ノコギリ、手斧、鉈、鎌、錐、スコップなど大型の道具
- 連絡道具(当時は携帯電話は人口に膾炙していなかったので1班に1つ無線機)
- 鍋など大型の調理用具
- バケツ
●行軍/Marching Order
ボーイスカウトのキャンプは山などに赴いて、そこで行なうことになります。流石にそこまで徒歩で行くと、到着するまでに1日掛かってしまうので、山の麓までは車や電車などを使って行くことになります。
到着した後は、それぞれの班毎にまとまって移動することになります。山道は細く、横に並んで歩くことは困難なので大抵は一列縦隊です。
それぞれが20キログラム前後の荷物を持って歩くことになります。比較的力のある隊員の何人かは背負子を背負い、自分自身の荷物に加えてテントを持つことになります。それ以外の班全体で必要な装備は残りの隊員で分担します。
班長が先頭を、副班長が最後尾を歩き全体の速度を一定に保ちつつ1時間に5分程度の休憩を進みながら、山を登ります。ある程度登ったら、野営に適した場所を探すために速度を落とし進みます。
野営に適した場所、というのは適度に開けていて水源(普通は川)に近い場所です。ただ開けているといっても完全に樹木の無い場所ではいけません。後述する設営の段階で困ることになります。
●設営/Camp
そうして、野営に適した場所を見つけたら次は設営にはいります。キャンプ地に必要なものは以下の通りです。
- テント
- かまど
- 水場
- 荷物置き場
- トイレ
荷物置き場は正確には「荷物を置く」だけの場所ではなく、食事をしたり皆で集まって話をしたりする場所に使います。普通の住居で言えばダイニングやリビングに相当する場所で、ここがキャンプ生活の中心地になります。
まずは荷物置き場とテントを設置する地面にある邪魔な物を除去します。草刈りをし、小石や木の枝を払うわけです。この作業を怠ると、寝るときに背中の下がごつごつして寝づらかったりしてしまいます。
荷物置き場には、班全体の装備として持ってきた巨大なビニールシートを敷き、更にその「床」の真上に位置するように、別のビニールシートの四方を木にく くりつけます。これが「屋根」になります。この屋根を作る必要があるため、樹木が全くない場所では適切な設営が困難になるのです。
水場とかまどは近い位置に作ります。両方に適度な大きさの穴を掘り、水場には川からたっぷり水を組んできたポリタンクを2つ置きます。ここが水道の代わりとなり、食器を洗ったり、料理の準備をするための場所になります。
かまどは環境によって幾つかの作り方があります。近くに大きめの石や倒れた木の幹などがあれば、地面よりも上にかまどを作りますが、そういった物が無い場合、空気が上手く流れるような形に穴を掘り、地面の中にかまどを作成します。
テントは、かまどから遠い場所に作ります。またこのとき、班全体の装備品にある謎の項目「大量の煙草」を使います。
持ってきた煙草はすべて、フィルタを外し、草をほぐしてバケツに貯めます。そこに水をなみなみと注ぎ、撹拌して「煙草汁」とも呼ぶべきものを作ります。この煙草汁をそれぞれのテントの周りにテントから1メートルほどの間隔を置いて、ぐるりと一周するように撒きます。
この煙草汁を撒くことで、ニコチンなど煙草に含まれる有害な成分を嫌う蛇や地を這うタイプの虫が寄りつかなくなるのです。
トイレは、設営地から離れた人目に付かない藪などで囲まれた場所に作ります。開口部が小さく縦に長い(最低でも50cm以上の深さ)の穴を掘り、掘り出し た土とスコップを穴の上に座っても手に届く位置に置きます。トイレを使用した後は腐臭を防ぐために上から土を盛るのです。
大雑把に語りましたが、以上が設営です。だいたいこの行程に4~6時間程度掛かります。
●生活/Living
キャンプ生活で最も重要な物資は水と熱源です。
水は川など近くにある水源から汲んできますが、そのまま飲用するのは安全とは言えません。そこで毎日必ず大きな鍋を使い一度沸騰させた水を班員に配ることになります。配られた水は各々が水筒で保管します。
ですが、キャンプの間は水筒を洗浄することはまずありえないので、そのまま水を保管しておくと微妙に鉄臭かったり生臭かったりして飲みづらい場合が殆どです。ですから、多くの場合それぞれが、お茶や麦茶、紅茶などのパックを持ってきて多少風味を付けた状態で飲用します。
熱源を確保するためには、燃やすための薪を集める必要があります。山でキャンプをする場合は、薪となる木材は大量に存在します。当然生えている樹木から枝を切り落としたりするのはルール違反ですので、落ちている物を拾い集めることになります。
拾い集めた木はビニールシートの上に集め、更にその上にビニールシートを被せて保管します。こうしないと地面から伝わる湿り気や朝露で、折角乾いていた薪が水分を吸ってしまい燃えづらくなるのです。
また、キャンプ中連日雨に見舞われてしまった場合、乾いた木を拾い集めるのは困難です。そういう時は、まず、持ってきた新聞紙や固形燃料を使い何とか小 さな焚き火を作ります。次にこの焚き火の周りにしめった枝を集め、乾かしていきます。そうして乾いた木を上記の方法で保管する、というやり方で薪を貯めて いくのです。また「熾き」は非常に便利なので、毎日かまどを使った後は砂を掛け熾きが消えないように保管します。
●最後に
ボーイスカウトにおけるキャンプはだいたいこのような行程で進みます。短い場合でも2泊3日、長い場合は5泊6日といった場合もあります。キャンプ中の生 活は、多くの時間を、料理や薪集め、野営地周辺の整備など「生活の為」の時間に取られてしまいます。ですが、余った時間は山を散策したり、渓谷に繰り出し たり、そこらにある木材で何か作ってみたりと、なかなか普段は味わえないようなコトができます。
野外に於ける生活について書いてみました。これを読んで頂ければ、皆さんがマスタをした時にも、野営のシーンを多少はリアルに描写することができるのでは無いでしょうか。
僕と言えば……
DM(僕):(コロコロ)。えーと1d100で08か、ワンダリングモンスタ発生だね。種類は……(コロコロ)。36だからドラゴン。この地域だとホワイトドラゴンだね。さあ戦闘の始まりだよ。