シナリオ「日シナの理緒ちゃん」15
1.
薄暗い室内に、2人の少女が入って来る――
理緒「明日のコンベンション用のシナリオ出来たー? ……って、留守かな」
なずな「作業はしてたっぽいけど。付せん紙でいっぱいの図鑑、なぐり書きの多いわら半紙、書きこんで並べてあるカード、エディタを起動しっぱなしのパソコンに……」
テーブルの上にあるものをチェックし始めるなずな。
2.
なずな「『旅に出ます。探さないでください』という書き置き」
理緒「…………」
なずな「…………」
顔を見合わせるなずなと理緒。
3.
理緒「……じゃ、とりあえずどこまで作ってあるか確かめて、善後策を考えよっか」
なずな「え、ええ。でもどうしてそんなに切り替えが早いの?」
理緒「予想外の事態に素早く対応できるようになりたいなら、日シナのマスタリング講座がお勧めよ」
4.
理緒「60年の実績を誇る日シナのマスタリング講座なら、経験豊富な講師陣が、プレーヤーの意表を突いた行動に対処するためのポイントを、一つ一つ丁寧に指導してくださるわ」
なずな「確かに、今度のことにはずいぶん意表を突かれたけど……」
5.
理緒「バインダー式のテキストと実用新案のマスタリング練習器を使いこなせば、反則すれすれの脱線が続いても余裕で対応できる実力が身に付くのよ」
なずな「その機転は、普段から鍛えられた結果なのねえ」
6.
理緒「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級合格者の9割以上が、日シナの出身なんですって」
なずな「困った事態に即応できるという、お墨付きを得たようなものね」
7.
残された資料を調べ終え、相談を始めるなずなと理緒。
なずな「わりといい所まで詰めてあるのね。大体の方針は固まってたみたい」
理緒「少し時間をかければ、私たちでシナリオを完成させることも出来そうだけど……」
8.
なずな「でも、コンベンションは明日だし、もう8コマ目よ。作業をするだけの時間もないのに、一体どうしたらいいの?」
理緒「仕方無いわ。こうなったら、最後の手段よ」
9.
『つづく』
そう書かれたカードを提示してみせる理緒。
目を見開いて一言もないなずな。