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2004年07月号

「PL向け」恐怖の与え方

特集: 単発記事
筆者: 白兵衛

 PCに恐怖を与えたいなら、恐怖を示すリソースがシステムに組み込まれたTRPGを遊べばいいわけで。クトゥルフとかゴーストハンターとかね。それで充分ですよ。
 恐怖はPLも体感してこその恐怖でしょうというわけで、おじさんがむかぁし考えた古いネタを引っ張ってきましたよ。

日常を意識して

 ホラーってのは非日常をネガティブにとらえる事だと思うんですよね。
 登場人物が、非日常の出来事に、何らかの嫌ぁな感情を抱く事がホラーになると。
 非日常を感じさせるには日常ありき。だから、まずはPLに日常を意識させてあげる事です。最初の数シーンは日常を演出してあげる事ですね。
 日常の演出では、「君(の周囲)は普段、こうである」ということを嫌と言うほど強調してあげてください。あからさまなくらいでいいです。

非日常の派手さ大きさ

 恐怖にも大きさというか派手さがありまして。派手に叫ぶ恐怖から、地味にゾクリと来る恐怖まで様々ですね。
 それはまあ、非日常の派手さ、大きさとイコールなのかなあと思います。
 ホッケーマスク+チェーンソーで人を襲う男は立派な非日常ですが、これは「派手な」恐怖になりますね。
 彼氏の笑顔に違和感を感じた、とかいう非日常は、「地味な」恐怖になりえます。
 どういう恐怖を与えたいかで、どういう非日常を演出するかは変えないといけないと思います。
 個人的には、TRPGでPLに恐怖を与えるなら「小さい」恐怖の方がいいと思います。
 「大きい」恐怖は、どうしてもドタバタになる傾向がありますからね。PLは楽しんじゃう事が多いですよね。

 で、次からは「地味な非日常」の演出方法です。

不安定感

 「地味な非日常」の
 不安定感を感じさせるってのはそんなに難しくないですね。
 要は「普段とちょっと違う」を演出してやればいいわけです……。

GM「テーブルには、いつも通り、朝食が用意されている。パン、ベーコンエッグ、トマトジュース、水菜と海草のサラダ」
PL「トマトジュース?」
GM「トマトジュース」
PL「……母に聞きます。『お母さん。トマト、苦手なんじゃなかったっけ』」
GM「母は不思議そうに君を見て答えます『いいえ? どうして?』」

 こういう。
 ここで、先ほど演出した「日常」が生きてくるわけですね。
 もちろん、PLが気づかずにスルーしてしまう可能性もあるので、こういう「非日常の元」は、日常のシーンでたくさん用意しておきましょう。日常のシーンが3シーンくらいあるとして、1人につき1シーン2~3個あればいいと思います。それが3シーン分くらいですかねえ。10個もあればどれかは気づいてくれるでしょうということで。
 これは積み重ねていくほど効果があります。じわり、じわりと。

語調

 マスタリングは、最初は、普通に、しかし派手にならないよう進めていきましょう。
 非日常を演出するにしたがって、静かに語るようにしていきましょう。
 淡々と語りましょう。できるだけ、できるだけゆっくり語りましょう。できれば軽く前に身を乗り出し、囁きかけるように(でもしっかりと)語りましょう。
 体臭が気になる人はケアを忘れずに。歯も磨いておきましょうね(笑)
 日常は「何も起きない」ものですが、「何か起こるかもしれない」ことを想起させていくのは重要な事です。

何か起こるかもしれない

 不安定感を感じさせ、語調も静かにゆっくりとなっていきます。
 しかし「まだ何も起こりません」。
 PLも不安になってきているころです。いつ、何が起こるのだろう? 何か起こることに間違いは無いのです。でも、「いつ」「どこで」何が起きるかわからない。
 この「何か起こるかもしれない」はホラーの華ですね。これを演出するのに、おじさんは「PCの定まらない視点」を使いました。
 これは、PCの視点として、周囲の様々なものを克明に描写していくというものです。
 不安になっている人間は、えてしてきょろきょろしがちなものですからね。

GM「階段がある。上は暗くて、よくわからない。扉は、閉じている、はずだ」
PL「階段を、上がります……」
GM「君は、使い慣れた階段に足をかける。踏み込むと、静かな家の中に、ぎっ、というやけに大きな音が響いた。木製の階段の木目。手すりは使い込まれて、 黒っぽく変色している。明かりが君を照らし、階段に影を落とす。もう一歩、君は進む。また足元から、ぎっ、という音がした。ぎっ、ぎっ、ぎ」

突然!

 さあ、いよいよPLに恐怖を体験してもらいましょう(笑)
 ホラーの醍醐味は、静と動の「突然の」切り替えにあります。
 個人的には「来るぞ来るぞ、いまだ!」というタイミングでイベントを起こすのは効果半減です。
 「いまだ!」と思っていたのに肩透かしをくらって「あれ?」と思っているその瞬間。もしくは「来るぞ来」くらいのタイミングで出すのが効果的のようですね。
 何にせよ、「予想外のタイミング」に「突然」静動を切り替えるべきでしょう。

 では、どのように「動」を表現するのでしょうか。

「動」の表現

 #今から書く方法は、TRPGのマスターとして正しいかどうかはわかりません。多分邪道ですよ(笑)

 おじさんがそのころよく使っていた方法は、

・机を動かす
・机を叩く

 といった手段でした。あと、

・ダイスの入った布袋を机に落とす

 とかもやりましたかねえ。
 現実で物理的なイベントを発生させるんですね。実際に「非日常」を作り出しちゃうわけです。経験上、机をガタン! と動かすのが効果的でしたかね。
 ここまでうまくできてれば、大抵のPLはビビリます。怖がりますよ(笑)

 他にもいろいろな方法があると思います。いまなら、ケータイの着信音をならす、とかどうでしょう。バイブレーションモードで震わせると、机の上で予想以上の音を出しますよね。
 「書類にはみるみる血がにじんできた」とか、本当に書類に赤い液体が浮いてきたりとか面白そうですよね。やりたいですねえ。

 まあ、この方法は、1セッションで一度しか使えないと思っていいので「派手な非日常」には合わないんですよね。派手な非日常では、この「突然のイベント」が次々発生しますから。

正体(オチ)

 恐怖の正体ですが、できれば「アレだと思うけど確信は無い」くらいに留めておくといいと思います。
 やはり完全にわかってしまっては興ざめですから。
 正体を完全には決めなくてもいいんじゃないでしょうか。
 オチで希望を感じさせるか、それとも恐怖だけ与えてフェードアウトさせてしまうか。はたまた他のオチをつけるか。
 その辺はまあ、あまり「恐怖」に関係ないので、適当に好きなのを選んでしまってください。

総論

 要するに、PLに不安定感を与え、緊張状態にしておいて、突然、予期せぬタイミングでイベントをたたきこむ、という手法ですね。
 おそらくほとんどのPLに「恐怖」を与える事ができると思います。
 そうそう。心臓の悪いプレイヤーさんが入ったときなどは十分に注意してください。あと、コンベンション会場などでは、周囲の状況を確認しながら使いましょう。下手するとものすごく迷惑ですから。

 それでは、楽しいTRPGライフをお送り下さい。
 ……長くなったな。

 著:白兵衛


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