2003年10月号

オンラインプレイ【創世記の思い出】

特集: 単発記事
筆者: 小野哲也

 今は昔。
 インターネットはまだ無くて(注:商用化以前であり一般に利用はできなかった時期)、市外通話が1分300円だった時代があった。
 その頃から人はオンラインプレイを行っていたのである。

 当然、ADSLもISDNも無かった頃であるから、皆モデムで繋いでいた。サーバーも不安定で、良く全員落ちてしまう「雪崩」という現象があった。
 それでも皆、電話代が安くなる11時を狙って繋ぎまくった為、まともな用事は11時までに済ませるのが当たり前だった。
 そして、11時を皮切りにオンラインセッションを行うのだが、雪崩が起きるわ、サーバは落ちるわでなかなか進行しないのが常のことであった。 セッションしてたら朝になってたなんてのはざらだった。しかし、絶対に8時は越えないという不文律もあった。なぜなら、8時を過ぎると電話代が高くなるからであった。

 当時のプレイヤーにとって、恐ろしいのは、モンスターでも非道なGMでもなく、“みかか”だった。みかか、この名は、NTTの隠語である。キーボードを見て欲しい。NTTのスペルに当たる場所には“みかか”とあるはずだ。
 それでも、みかかとの戦いは熾烈であった。月に2回もオンラインプレイを行えばみかかから、たっぷりとうん万円の請求が届く。当時はサーバも従量制であったからサーバ代もかさむのだ。そのサーバ代の事を私たちは“みいそ”、と呼んでいた(注:NECのパソコン通信PC-VANを利用していた。現在のbiglobeの前身である)。みかかとみいそに負け、参加できなくなった人たちも多数いた。
 私も一度は10万円という大台をたたき出し、絶体絶命のピンチに陥った事もある。

 しかし、それでも我々はオンラインプレイを行った。
 なぜか?
 ぼうやだったからかもしれない。
 しかし、そこには夢があった。テキストだけの自分の打った文字が相手に届いたか届かないか祈りながら行ったオンラインプレイ。決め台詞を叩き込んだと思ったら回線が切れていた、何てこともざらだった。
 しかし、知らない人とハンドルだけで話をする。そんなワクワクとした未体験ゾーンは、パソコン通信世代に強烈なSF体験を残したのである。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)