シナリオ「日シナの理緒ちゃん」14
1.
靄がけぶる草深い岸辺。若い男女が鳥撃帽を被り、防寒着に身を固め、猟銃を手に茂みに潜んでいる所を正面から捉えた構図で――
理緒「鴨撃ちは私、初挑戦なんですよ」
松尾「僕もまだ2度目。でも、前回は先輩が腕利きで、ずいぶん分け前があったよ」
2.
松尾「でも、経験が少ない割には、ずいぶん銃器に詳しかったね。銃オタクなのかな」
理緒「私、TRPGをやっていて、銃についての資料はけっこう読んでいるんですよ」
3.
松尾「TRPGか。猟くらいしか趣味がない僕でも遊べるのかな」
理緒「自分の得意分野や楽しかった経験をTRPGに活かしたいなら、日シナのマスタリング講座がお勧めですよ」
4.
銃を構えた二人を背後から見る構図。彼らの向こうに湖と鳥影が見える。
理緒「60年の実績を誇る日シナのマスタリング講座なら、自分の体験を反映させたシナリオやキャラ作成を、超一流の先生方が親身になって指導して下さるのよ」
松尾「ハンターとしての僕の技術を形にして、実際のプレイに利用できるわけか」
ぱん、ぱんと銃声。もやの向こうの鴨の群れがざわめく。
5.
理緒「実用新案のマスタリング練習器を使えば、思い出に残るシーンを再現しての模擬プレイを、何度も試してみる事が出来るわ」
松尾「状況を把握して、うまく立ち回る、野生で生き延びるための知識が、話をもっともらしくするのに役に立つわけだね」
理緒「解ってますねー」
ぱんぱんぱんと銃声。鴨の群れが理緒たちに注意を向ける。
6.
理緒「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級合格者の9割以上が、日シナの出身なんですよ」
松尾「うん、猟をしない間の暇潰しに、TRPGをするのも楽しいかも知れない……が……」
ぱんぱんぱんぱん。理緒たちを注視する鴨たちが、一羽一羽識別できる程度に近づいている。
7.
集まってきた鴨の群れに囲まれ、途方にくれる様子の理緒と松尾。
鴨たち「ぎゃわぎゃわ」
理緒「これは一体どうしたことだろう」
草むらを分けて、一人の男が顔を出す。
ベテラン「なんだ君たち。あれだけ撃って、一羽も当てられなかったのか」
松尾「……」
8.
ベテラン「君たちの側に群れられると、俺等も危なくて撃てないよ。弾が尽きたのならもう帰ったほうが良いんじゃないか?」
松尾「……そうします」
理緒「そうか。撃っても当たらないから、鴨たちのシェルターにされちゃったのね、私たち」
鴨たち「くわっくわっ」
9.
鴨の群れを引き連れる形ですごすごと歩く松尾と理緒に、明るく声を掛けてくる女性がいる。
真冬「あら、大猟だったみたいね」
理緒「そういう訳じゃ……」
言いよどむ理緒。黙る松尾。
鴨たち「がー」