シナリオ「日シナの理緒ちゃん」18
1.
チョッキに似た簡素な衣服を着たウサギの群れ。ナレーションが入る。
ナレーション《群れの中の1匹が何やら声高に、皆に語りかけています――》
ウサ助「この地に危機が迫っているですっ。皆が力を合わせて対処しなければいけませんっ」
ウサギ1「……と言われてもなあ。話が突飛過ぎて、付いていけない」
ウサギ2「なんだか怖いし」
2.
ウサギ3「まあ、そんな事が気になるんなら、地道に対応してみろや」
ウサギ4「行こ行こ」
ウサ助「皆の協力が必要なのですっ、て言ってるのにっ、ああ……」
ぞろぞろと去っていくウサギ達。取り残されるウサ助。
3.
焦燥するウサ助。
ウサ助「どうやったら皆を説得して、事態を打開するための仲間を得ることができるのでしょうっ」
理緒「仲間を集めたくて、効果的なアピールのしかたが知りたいのなら、60年の実績を誇る日シナのマスタリング講座がお勧めよ」
背後からウサ助に語りかける、ウサギの耳を生やした理緒。
4.
ウサ助「マスタリング講座?」
理緒「そう、日シナのマスタリング講座なら、サークルを作りたい、プレーヤーを募集したい等、TRPGを遊びたい時に必ず出てくる希望の一つ一つに、超一流の先生方が親切丁寧な対処法を指導してくださるのよ」
5.
理緒「バインダー式で使いやすいテキストと、実用新案のマスタリング練習機を使えば、告知する時に前面に押しだすべきポイントがすぐ見つかるから、きっとみんなも興味を持ってくれるわ」
ウサ助「おおっ……」
6.
理緒「1日20分の練習を続けるだけで、シナリオ検定にも楽々合格。シナリオ1級合格者の9割以上が日シナの出身なんですよ」
ウサ助「そうか、1日20分程度なら、今からでも間に合うかも知れないねっ」
7.
ウサ助「よしっ、とりあえず説得力が身に付くまでの間、TRPGでも遊んでいようっと」
理緒「んじゃご一緒します」
ナレーション《――こうして、群れに迫る危機に唯一気付いていたウサ助がゲームにうつつを抜かしている間に……》
8.
ナレーション《村は壊滅状態》
織り重なって倒れているうさぎ達。目を回した理緒の姿も見える。
9.
ナレーション《ただ1匹生き残ったウサ助はマスタリングも出来るウサギとして有名になり、何不自由無い余生を過ごしたということです》
札束を敷き詰めた部屋で宝石などを弄びながらくつろいでいるウサ助。
理緒「まさに『芸は身を助く』というやつですね」
頭上に白い輪を浮かべた、ウサギ耳をつけた理緒。