基本プロット構想メモからシナリオを仕上げる
鍼原神無〔はりはら・かんな〕
シナリオ仕上げの作業
作業方針
「ブルーローズ」のシナリオ作りやマスタリングで陥り易い「情報過多」を裁くためのシナリオ・メイクについて。
セッションで扱う情報をはじめから制限するのではなく、適度な情報錯綜感を楽しむために情報を制御し易いシナリオを作る作業について、何度かに分けて説明してきました。
最初は、「次のシナリオで一番やりたいこと」のアイディアから、基本プロットを仮組するとこまで。
次に、基本プロットの調整。
それから、前回は基本プロットの調整と並行してやる、オーパーツや舞台設定の仕込みについて。
今回から、材料が揃った後の仕上げについてです。
シナリオも、手をかけようと思えばいくらでも手をかけられます。
どれくらい手をかけるかも、GMさんの個性やメンバーが好むシナリオ傾向などで様々でしょう。
どの程度手をかけるにしても方針はシンプル――、
基本プロットを再整理する。
マスタリングし易いよう、プレイヤーさん/PCに何を解決してもらうかを中心に再整理します。
それと、「ブルーローズ」の場合は、「PCにどんなミステリーに直面してもらうか(プレイヤーさんには楽しんでもらうか)」も考えます。
後者は、シナリオ傾向や、セッション・メンバーの好みによっては薄いこともあるでしょう。けれど、「ブルーローズ」らしい情報錯綜感を楽しむためには「PCが直面するミステリー」の要素をゼロにはしない方がいいです。
「何を解決してもらうか」と「どんなミステリー」かを相関させて考えてけば、自ずとマスタリングで扱う情報の等級や優先度、提示タイミングなどが決まってくるはずです。
作業に際しては、舞台背景やオーパーツ、クリーチャーなど(場合によっては敵性NPC)などのデータや個性も勘案します。
――、以上が作業方針になります。
作業の大筋
まず、作業の大筋を見ておきましょう。
A-1)基本プロットの再整理
A-2)ミッションの整理
A-3)マスタリングで扱う情報の等級再整理
B)オーパーツ、クリーチャー、NPCなどのデータ確認、整理
A-1~3系統の作業と、B系統の作業を並行します。
基本プロットの再整理
クライマックスと初期ミッションを重視
とりあえず、具体例から見てもらいましょう。
「基本プロットテイク・オフ状態」と「シナリオ・メモ作業途上」(付録2)を比較してみて下さい。
「『次のシナリオで一番やりたいこと』のアイディアから、基本プロットを仮組」までは、「最初のアイディア」を膨らませ、シナリオに使えるかもしれないアイディアをいろいろ思いつくことを優先していました。
「シナリオ仕上げ」段階では、セッション時間や情報管理の関係で使えそうにないアイディア、使いづらそうなアイディアを、ふるいにかけます。
情報過多を避けるためです。
この段階の作業では、シナリオの「4クライマックス~5決着」の部分と「1承前~2導入」の部分が重要になります。
3、6の項目は一旦白紙に戻してしまいます。
「最初のアイディアを膨らませる」には、思いついたところどこから手をつけて構わない。
シナリオ上のどこかのパートを重視などすると、かえって発想がしばられることも起きます。
けれど、シナリオを仕上げる段階では、マスタリングのし易さやセッションの時間管理を優先。使いづらいアイディアは切り捨てることも考えていきます。
事例で言うと、アタシは、最初のアイディアの「大都会で恐竜」のアイディアは綺麗に捨てることにしました。
タイム・ワープのアイディアが出て来て、「過去から来て過去に戻っていく恐竜人類」ってストーリーが浮かんで来ているからです。
ここで、最初のアイディア「大都会で恐竜」に拘ると、情報過多にしかなりません。
多少もったいない気がしても、使いづらいアイディアは切り捨てていきましょう。
実は、セッションでプレイヤーさんが予想外のアクションを仕掛けてきたとき、ここの作業で「一端きり捨てたアイディア」が役に立つことも多いです。
万一、そうした展開が起きなくても、使えなかったアイディアは、いずれ別のシナリオで活用すればいい、と腹を据えるくらいがよいです。大胆に切り捨てましょう。
「決着」パートについては、少なくとも、グッド、ノーマル、バッドのエンディング・バリエーションを想定します。
「承前~導入」の部分では、少なくとも初期ミッション(オープン・ミッション)を明確化していきます。
ミッションについては、ヒドゥン・ミッションを想定する/しないも含めて、「A-2)ミッションの整理」にかけて確定していきます。
さらに「ミッションの整理」と関連付けて、先に想定したエンディングのバリエーション想定も詳細化していきます。
Tips:逆順でシナリオを整理
この作業段階のTipsは、「シナリオ・メモ作業途上」にあるように、6→1の方向に、実際に仕上げるシナリオとは逆向きの項目(大項目)の順にメモを整理していくことです。
実作業は単純。
まず付録1のように「基本プロットテイク・オフ状態」を再配列したメモを作ります。
付録1から付録2で、「エンディング・バリエーションの整理」と「ミッション明確化」を進めています。
大項目の3と6を一旦削除し、4、5、1、2を補完しています。
不思議なもので、こうした書き順でメモを整理すると、「どんな情報をどのタイミングまでにプレイヤーさんに伝えないといけないか」を意識し易くなります。
セッション時間とペース配分を脳内シミュレートしながら、情報処理にどれくらい手間取りそうか検討していきましょう。
逆順で整理することで、情報処理にもたつきそうなアイディアを見極め、切り捨てる/捨てないの判断をつけ易くなります。
ミッションの整理
ヒドゥン・ミッションとオープン・ミッション
検討事例では、「ヒドゥン・ミッション」発生を想定することにしました。
GMの情報管理では、特に「遅くともミッション再定義をしておかなくてはいけない」タイミングの決定が重要になります。
このタイミングは、「オープン・ミッションで何を指令するか」、と「オープン・ミッションで財団が想定していなかった事態は何か」と関係します。
この二項を相関させて、はじめて、何をいつまでにプレイヤーに理解してもらわなければならないか、――つまりは情報の等級付け整理(A-3段階の作業)ができます。
事例のシナリオでは「オーパーツ暴走にともなう被害」を「オープン・ミッションで財団が想定していなかった事態」と想定することにしました。
もしかしたら、プレイヤーの全員が「オープン・ミッションかたヒドゥン・ミッションへの切り代え」を考えるには不充分な条件かもしれません。こ の可能性は、心にとめておきますが、まずは「暴走にともなう被害」が「財団の想定外」なのでヒドゥン・ミッションが発生する路線で考えることにします。
ちなみに、シナリオで扱うネタによっては、ヒドゥン・ミッション発生をあきらめ、はじめからクライマックスに関るミッションを、オープン・ミッションとして扱った方が、マスタリングもセッションも楽なことがあります。
本筋の話からはズレますけど、上記の見極めは、例えば、カジュアル環境用に作ったシナリオのコンベンション用改造を考えるときなんかには有効な着眼点になります。
いよいよ最終段階へ
今回は、ともかく、ヒドゥン・ミッション発生を想定してシナリオを整理していくことにしましょう。
検討中のアイディアの場合、恐竜人類がタイム・カプセルに入っていた事情、恐竜人類の動機などが、ヒドゥン・ミッション発生に大きく関ってくることでしょう。
なぜなら、「オーパーツの暴走」は、財団も初期想定はしてないし、シュープリーム側も認識が甘い、ってことで考えてるからです。
暴走を予想し、PCに危険を察知させる物語内の有力情報源は、第一にシュープリームに追われてる恐竜人類ってことになります。
この辺でB系統の作業とA系統の作業を一体化させる必要がはっきりしてきました。
後は、並行してやってる、オーパーツ・データ、クリーチャー・データ、舞台背景の詳細(必要があればMAPなど)を相関させながら、もう少しディテール・アップ。
情報の等級付けなどは、ルーリングも考えないと細かなチェックできませんから。
特に今回の事例では、恐竜人類とのコミュニケーションがミッションを左右しそうです。
今の作業段階では「交流系」技能だけで処理しようか? 神聖言語も絡めようか?? 考えてるところです。
(多分、オーパーツの暴走阻止には「神聖言語」を使って、ほかは交流系技能、で処理とかになりそうな気がしてます)