2004年04月号

ハンドアウトを使おう

特集: 単発記事
筆者: 逃亡者

前書き

 昔から、依頼というのはマスターにとって悩みのタネでした。
 伏線のつもりで出したサンマ傷の隻眼NPCが
「君たちの腕を買いたい」
 と言おうものならPC達は隻眼NPCに警戒の目を向け、依頼を断ってしまうことも度々でした。
 このため、マスターはなるべくPCに警戒心を抱かせないような依頼方法を考えたり、断れないような状況にどうやってPCを陥れるかに頭を悩ませていました。

 ところが近年ハンドアウトや、それによく似たルールがシステムに組み込まれるようになりました。
 私はこれをPCの設定の一部をマスターが決めるものだと解釈しています。
 これのおかげで、かなり無理なものでもPCが依頼を受ける理由をルールに沿って提示出来るようになりました。

 ここでは私がハンドアウトにどのようなことを書いているかについて書きたいと思います。
 もちろん私が使っている方法であり人によって色々違いはあります。
 そう言うわけで例の一つとして読んでみてください。

 ハンドアウトといってもルールによって若干の違いがあるのでアルシャードを参考にすることにします。

ハンドアウトの目的

 私はハンドアウトを作成する際に「PCが事件に関わりたくなるか、かかわらなければならないようにする」ことを目的に作っています。
 この目的が満たされていればPCの役割やマスターから提示する設定といったものも自然に伝えることができます。
 「PCが事件に関わりたくなるか、かかわらなければならないようにする」というのが以下の一つの項目でみたされた場合、他の項目は曖昧でもそのままプレイヤーに渡すことにしています。
 この場合、曖昧な項目はプレイヤーが望めばPCを作成する過程で相談して埋めていっても良いでしょう。

 以下アルシャードのハンドアウトの各項目について解説していきます。
 またシナリオの流れはできているという前提で話していきます。

コネクション、関係

 アルシャードのハンドアウトの最初の項目は、コネクションと関係です。私の場合、ここは主要NPCの紹介をする項目であるというつもりで考えるようにしています。
 主要NPCはPCが事件に関わる理由に直結しているものなので、「PCが事件に関わりたくなるか、かかわらないといけないようにする」という目的も達成出来ます。

 ここで注意するのは重要NPCにもかかわらずコネクションにしない、ということをなくすることです。
 ハンドアウトにコネクションの項目があるので、かえってここに書いていないNPCに注目してもらえないというのがよくありました。
 以前私は主要NPCを誰のコネクションともしなかったおかげで、ちぐはぐなセッションとなってしまったことがあります。 これを避けるために一回は主要NPCのリストアップをしています。

 逆に主要NPCの数が少なくてあるPCにコネクションを書き込めないと言うこともあるでしょう。
 この場合は依頼人を書くというのが最も簡単な方法です。
 また、少し反則になるのですがハンドアウトを提示する段階では空白にしておきキャラクターが完成した段階でキャラクターシートに書いてあるコネクションを依頼人にするということをよくします。
 この方がPCにとって強い理由になるようで「PCが事件に関わりたくなるか、かかわらなければならないようにする」という目的にもかなうことが多いようです。

クイックスタート、コンストラクション

 ハンドアウトを書く際に私はここ少し悩みます。
 と言うのもシナリオの状況に適したサンプルキャラが複数あることが多いからです。
 このような場合、私は無理に絞り込むことはありません。
 可能な限り絞り込み、それをクイックスタート・コンストラクションとします。
 もう少し具体的に書くとまず個々のハンドアウトにふさわしいクラスはないかを考えます。
 このときすぐに思いついた物のみをコンストラクションとしてハンドアウトに書きます。
 これで全てのハンドアウトに書き込むことができればいいのですが、そうは行かない事が多くあります。
 また、これでは多くのシナリオで必要な基本4クラスであるファイター、スカウト、ブラックマジシャン、ホワイトメイジをパーティで持っていないと言うことも起こり安くなります。
 これを防ぐためにプレイヤー達には基本4クラスは持っておくように言っておきます。
 そしてPCとして使って欲しくないクラスを決めておきます。
 このクラスではちょっとまずいというようなときはあるでしょう。
 しかしサプリメントの増加で使って欲しくないクラスのリストアップも大変になってきています。
 キャラクター作成の際にプレイヤーがクラスを選ぶときにどのクラスを選んだかを教えてもらった上で判断しても良いと思います。

 ここまでするとハンドアウトによりコンストラクションが指定されているものとコンストラクションが指定されていないものがあることになります。
 キャラクター作成に時間をかけることができる時はこれで十分です。
 むしろプレイヤーがかわったクラスの組み合わせをして面白くなることもあります。

 キャラクター作成に時間をあまりかけることができないときのことも書いておきます。
 このときはコンストラクションが指定されているもので基本4クラス以外が指定されているものは対応するサンプルキャラクターをクイックスタートにしておきます。
 コンストラクションが基本4クラスのハンドアウトとコンストラクションも指定していないハンドアウトはそのままにしておます。
 この二つの場合もキャラクターを作るときにコンストラクションで作るのではなくサンプルキャラクターから選んでもらうようにします。
 例えばコンストラクションがファイターの場合ファイタークラスを持つサンプルキャラクターを選んでもらいます。

 市販のクイックスタートをしっかり決めているシナリオに比べればキャラクター作成に多少の時間がかかりますが十分短い時間でキャラクター作成を終えることができます。

本文

 ハンドアウトの本体であり一番重要な箇所です。
 コネクションの項目もクイックスタート、コンストラクションの項目もここに書かれている事の内データとしてキャラクターシートに書き込むことができるものを抜き出したものとも言えます。

 ここでは本文を最後に書くという前提で話をしています。
 これは本文になにを書くかわからないという時に書くべき内容を整理しながら作業を行っていくためです。
 本文が他の項目を埋めるまでもなく思い浮かんだのであれば本文を最初に書いてしまってからコネクションの項目とクイックスタート、コンストラクションの項目を書き込み再度本文の確認をするのがよいでしょう。

 本文の最初にはコネクションとクイックスタート、コンストラクションの項目をもう一度書きます。
 これはコネクション、クイックスタート、コンストラクションの項目がシナリオで起こる事件で重要であることが多いからです。
 オープニングで依頼をPCに持ちかけることしかしないNPCであっても発端という意味で十分重要な存在です。
 クイックスタート、コンストラクションの項目の方は、私の場合書かないこともあります。
 また時間短縮の都合で少し無理をして書くこともあります。
 無理をして書いたようなときは他のことに注目して欲しいのでクイックスタート、コンストラクションの項目に書いたことをもう一度本文で書くことはしません。

 この後からはまさしく本文の本体です。
 シナリオでPCにつけられる背景設定、時には心情まで書きます。
 ここで書く内容はだいたい以下の3つのパターンになることが多いように思います。

1.オープニングの状況に至るまでにあった経緯、状況

 これが最も多いのではないでしょうか。
 オープニングでPCが事件に関わる決心をする理由となった事件や心情を書いておくのです。
 例えば、
「眼帯の顔に傷のある男に助けられ感謝している」
 これで十分です。
 ただ最低限のものなので市販のものと比べるとかなり見劣りがします。
 あまり長くならない程度に助けられた状況を入れたり傷の男の描写を入れたりするのもいいでしょう。

 書き終わった後は
 「だから君はこの事件に関わることにした」
 という言葉を頭の中で添えてからシナリオのオープニングを読みます。
 この時あまりにも無理があるようならハンドアウトとオープニングを見直すことになります。

 ちょっと無理がある、という程度ならそのまま完成としてもいいでしょう。
 どうしても気になるのなら無理があるところを元にしてシナリオを見直してみるのもいいと思います。

2.オープニングのあらすじ

 一番楽な方法ではないでしょうか。
 オープニングの内容を短めにまとめ、さらにPCの行動や考えまで書きます。
「眼帯と傷の男は君の前にすわり、金貨の入った袋を机の上に置いた。
 君は男の依頼を受けることにした」
 ここでは「依頼を受ける」とPCの判断まで書きましたが、プレイヤーの意志にゆだねたいようなときには書かなくても良いでしょう。

 この方法の利点は、かなり無理な状況でもPCの判断をコントロールすることで事件に関わってもらうことができることです。
 私の場合ですが、こうやって強引に事件に関わらせてもPCの存在がないがしろになることは少ないように思えます。
 普段こういった方法で事件に関わらないPCがなぜこの時に限って事件に関わったか。
 その事を頭の片隅においてプレイヤーとの話しを聞いておけば後の展開に生かすことができます。

 PCが敗北した状態からはじめるという使い方もできます。
 自分のPCが敗北するというのは大抵のプレイヤーが嫌がることです。
 敗北により何が失われるかわからない上に再起出来るかわからないからです。
 ハンドアウトで一度は敗北することを示し、再起が可能であることを保証しておくとスムーズに行きます。
 敗北する過程を楽しむこともできるので、その後での反撃に力がより入るくらいです。

3.長いオープニングの前半

 これは最終的には「1.オープニングの状況に至るまでにあった経緯、状況」と同じようになることも多いのですが、書くまでの経緯が少し違うので別に説明することにしました。
 シーンをルールにしたシステムでは1つシーンは時間的な隔たりのない一つの場所であると言うことになっています。
 またオープニングでは1人のPCに対して1シーンをかけることが標準になっています。
 しかしオープニングに2つのシーンをかけたい場合があります。
 PCが一端敗北し再起のためにある町を訪れるというような場合です。
 ここで少し考えなければならないのは、アルシャードは登場したシーンの数が経験点につながることです。
 1人のPCが多くのシーンに登場するというのは経験点の問題から好ましくありません。
 この様なときは特別に2つに分けるべきシーンを1つのシーンにしてしまうという方法もあります。
 この方法でもいいのですが、本来二つに分けるべきものだったので1人のPCに思いの外時間がかかってしまうときがあります。
 また2つ分のシーンならいいのですが3つ以上のシーンを費やしたいこともあるでしょう。
 こうなってはさらに時間がかかってしまいます。
 この様なときには始めの方のシーンをハンドアウトに記述してしまうほういいでしょう。
 長いシーンでプレイヤーの集中力を削ぐことがなく、時間もかかりません。

最後に

 今回は依頼というテーマを拡大解釈してシーンを使ったシステムのハンドアウトについて書いてみました。
 ここに書いたことは当然だという人も多いでしょうし、こんなのはまだ甘いという人も多いでしょう。
 もっとよい方法があれば私も是非知りたいので、ここに投稿するなどして教えていただけないでしょうか


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