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2003年07月号

エッセイ『夢を見よう』

特集: 単発記事
筆者: 志名波諸智

 変な夢を見るのである。
 どちらかと言えばHな夢の方が好みなのであるが、どういう訳かその手の夢は殆ど見ない。
 一体どうしてそういう夢を見るのか訳の分からないけったいな夢を見るのである。
 時々自分の頭を開いて中を覗いて見たくなるような気にもなるが、本当にそんなことをすると死んでしまいそうな気もするので実際にやってみるつもりは無い。無いったら無いのである。大体において痛そうではないか。それに開けてみて中身が空っぽだったりしたらどうするのだ。こちらは本当にそういうこともありそうで、「ああ、俺の頭の中はやっぱり空っぽだったことであるよ」と納得しつつ死んでしまうというのも相当間抜けな光景で結構心惹かれるものがないではないのであるが、いかんいかん、本当にそういうことをするつもりは無いのである。

 変な夢を見る、というだけであれば、それだけで話はオシマイである。という訳でこの原稿は此処で終わるのであるが、いや、そうは問屋が卸さないのであって、此処からTRPGの話に繋がっていくのである。
 月刊TRPG.NETというとても面白くてためになるWeb雑誌があるのであるが、その2003年4月号に死せる詩人さんの 『映画を観よう』 というやはりとても面白くてためになる記事が掲載されている。まだの方は是非ご一読いただきたい。ちなみにその下に掲載されている『混ぜるな、危険!』という記事はくだらないので読んではイケナイ。とりあえず警告はしたのである。したのであるから、くだらなかった、つまらなかった等の批判は受け付けないので悪しからず。ちなみにお褒めの言葉であれば幾らでも受け付ける所存である。是非どしどしお寄せいただきたい。
 と、CMはここらで切り上げるとして、映画がシナリオのネタになるのであれば、自分の夢だったらどうであろうか、というのがこの原稿の主題なのである。

 例えば、昨晩、こんな夢を見たのである。
「その街では年に一度お祭が行われるらしい。神殿前の広場に出かけて行くと街中の人々が集まってきている。色とりどりの瓶には水が溜められていて、これを流すことで鐘を鳴らす、そういう仕掛けがあるのだと言う。街は乾燥しており水は貴重品である。この水は一年かけて雨水を蓄えたものであるらし い。一瓶を三十分毎にあけて神々を称える鐘を鳴らす、その儀式が今まさに始まろうとした時、一人の幼児がうっかり数瓶ほどを倒し水をこぼしてしまった。善良だが融通の聞かない司祭はおろおろし、厳格にして冷酷な市長は幼児の処罰を主張する。神殿の地下深くには得体の知れない怪物が出ると言うことで放棄された古の神聖な井戸があるらしい。幼児をかばった青年は友人達と水の涸れることの無い古の井戸を目指す」

 あるいは、
「家出した少女を探してくれ、との依頼を受ける。仕方が無いので探してみるが、どういう訳か居場所を転々としている。奇妙な街の奇妙な人々の証言によれば、何かから逃げ回っているらしい。何故家出したのか知りたくなって学校に行ってみると、少女の友人が数日前に自殺していたことが分かる。どうやら、二人は大喧嘩をやらかしていたらしい。再び少女を追い始めた自分の視界の隅に不吉な影がちらちらとよぎり始める。少女は幽霊から逃げ回っていたようだ。とうとう夜の学校で少女を補足するが、その時、幽霊も追いついてくる。幽霊は少女に「ごめんなさい、あなたを傷つけるつもりじゃなかったの」と告げて消え失せてしまう」

 あるいは、
「古い街角で一人の男を見かける。どうした訳か黒服の男たちに拉致られそうになっているので思わず割って入ってしまう。なんとか逃げ出すことには成功するが、次から次へと、ダークスーツやら軍服やらカンフー服やら腰ミノやら神父のような格好をしたのやらに襲撃される。その都度懸命に逃げ出すのだが、何故、そういう風に襲われるのかが全く分からない。狭い路地を逃げ回り下水に潜り気が付くとモーターボートで海を渡り、とうとう荒野の小高い丘の辺りにまで逃げてくる。じりじりと包囲を固めてくる襲撃者達。その時不意に正体不明の男はするすると宙に浮き始めそのまま空の彼方に消えてしまう」

 大体、こんなものである。
 こういう夢を割と頻繁に見るのである。正直わけがわからない。
 ともかく夢であるから全体に辻褄はあっていない。あっていないが、いじりまわし徹底的に加工すれば、何とかシナリオに仕立て上げることもできそうな感じではあるし、事実、シナリオに使ってみたこともある。
 セッション間際の追い詰められた時期であれば、実に、これ幸いと言うところであろう。これなら、宿泊型コンベンションで急遽GMを引き受けなくてはならなくなった時にも、もしかすると役に立つかもしれない。無論、夢をも見ずにぐっすり眠ってしまって翌朝顔面蒼白ということもあるかもしれないが、 なに、よく眠れた分だけコンディションは快調になっている筈である。
 夢を思い出す方法は簡単である。枕元にメモと筆記具を用意し、寝て、目が覚めたら見た筈の夢を思い出すようにすれば良いのである。実際にメモをとる必要はない(無論、とっても良い)、見た夢を忘れないようにする心構えさえあればOKなのである。そういうことを一週間もやっていれば、何とはなしに簡単に見た夢を思い出せるようになる。
 夢の話であるから、見た夢全てが使える訳ではないことも、とりあえずお断りしておく。他人の夢までは保証の限りではない。大体、自分の夢ですら、けったいな夢を見たからといって、それが全てシナリオに使える訳ではないのである。
 例えば、
「宇宙戦艦ヤマトの第三艦橋勤務の辞令が発令された→第三艦橋はよく壊れる→殺す気か!」やら「超巨大なエンシェント・レッド・ドラゴンが攻めて来る。迎撃用に起動するマジンガーZ。しかし、相手は熱に耐性がある為、有効な武器はロケットパンチだけであった。苦戦するマジンガーZ」とかいう夢を見た場合、どうにもシナリオにしようがないのである。というか、静かに自分の正気を疑ってしまったりもするのである。


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