2003年01月号

初心者KyrieのGURPS世界構築失敗記

特集: 単発記事
筆者: Kyrie

 私がTRPGを始めたのは今からおよそ三年前のことです。
 全てはあの日、謎の多いある友人の家に遊びに行った時から始まりました。
 私はいつものように彼と雑談とテレビゲームを楽しんだ後、友人の部屋にお邪魔しました。そこで一冊の本を見つけたのです。
 それは、文庫版のガープス・ベーシックでした。
 そのときのかすかに残る記憶を掘り返せば…

「なあ」
「何? どうかしたん?」
「……これ何?」
 その怪しげな表紙に惹かれ、思わず手にとってめくりながら彼に私は尋ねました。
 奴の顔に浮かぶ邪悪な微笑。
「TRPGって知ってる?」
「いや、ぜんっぜん」
 当時、私はTRPGというものの存在自体を知りませんでした。ましてやそれがどんなものであろうかなど、知っている訳がありません。今考えれば少し恥ずかしい気さえしますが、その時はそんな状態でした。
「えーっとね、まあ紙と鉛筆でやるRPGやね」
「紙と鉛筆?」
「そう。で、”なりきって”話を進めてくのな」
「なりきるって……”なる”っちゃどういうこと?」
「キャラクタを作って、それになりきって話を進めるんだよ」
「ふうん……」
 当時、私は余暇時間をどうやって使えば良いかに困るぐらいの暇人でした(今思えば、もっともっと勉強しておくべきだったかもしれません)。こういった話に反応しないはずがありません。
「実際、どんな感じなの?」
「んー……」
 友人は言葉に詰まります。これは今思えば当然のことですし、私にも未だに簡潔に説明するということは出来ません。それだけTRPGが多くの要素を抱えた、奥深い趣味であるということなのでしょう。
 そして、彼のとった行動は。
「やればわかる」
 単純明快。これ以上の方法はなかったでしょう。
「やるって……まさか今から?」
「いいからいいから。はい」
 そう言って彼は私に半ば強引にキャラクタシートを渡し、ガープスのルールを説明していきます。彼の説明が上手だったこともあって、二時間ほどで(今では苦い思い出の詰まった)初キャラクタが完成します。
 そしてそのまま、雪崩の様に初セッションへと向かいます。まったくの即興シナリオで、進行もところどころ滞りがちでしたが、それでも初心者相手にはかなり上手く回った方だと感じています。何故か深夜の街の中を女性が指輪を探して匍匐前進し、それを手伝えば黒光りするカサカサ君(台所なんかにいるあいつです)を素手で握り締めたり、果ては有り金全部盗られたりと色々ありましたが、とても楽しく、そして充実した時間を過ごすことが出来ました。
「どうよ?」
「いや、面白いなこれ」
 この瞬間、私はガープスに、そしてTRPGにはまってしまいました。
「借りてええか? これ」
「ええよ。ただし返せよ」
 かくして私は家でガープス・ベーシックを読み漁り、新しい刺激に満ち溢れた時間を過ごすことになるのです。

 そしてある時ふと、思います。
 自分が永らく描いてきた世界を、これで再現する、表現するということはできないだろうか?
 私は絵も描けなければ、小説も何も書けません。然しこれならば。これであれば、打ち込む事が出来るのではないか。
 早速作業に取り掛かりました。文具店でルーズリーフを購入し、思いのままに脳の中に蓄えられた情報を手から紙に投射していきます。みるみるうちにイメージは文字となり、設定となっていきます。私は満足していました。

 然し次の日の朝、目を覚ましてそれを眺めて愕然とします。あまりに独りよがりな内容、世界設定としての穴の多さ、そして絶対的な情報量の不足。これでは到底、実際に使ってプレイすることなど出来ませんでした。理由は色々あったと思います――TRPGやガープスについての理解の無さと経験の薄さ、狭い視野と偏った知識、表現の貧弱さ。それら全てが重なって、実に陳腐な代物となっていました。
 そこで私は、どうやら先ずはルールを理解しようと努力することにしたようです。ルールを叩き込むためにルールブックを読み漁りましたし、そうした本が希少だったために行った「文庫版ルール要約写し取り」は頭にルールをこびりつかせるのに効果的でした。空で技能をすらすらと言えるようになると、設定を考えたり書き上げたりするのがとても楽になった実感がありました。

 そうしてどんどん記憶の中にルールを詰め込んでいった私ですが、やがてそれを日本語版についてやり終えると、何をしたら良いか分からなくなってしまったようです。この一年半ほど続いた時期は、とにかく思いついたことをひたすら紙に書いては消す、といったことを繰り返していました。今ではその多くが紛失してしまいましたが(実に惜しい損失です)、現在の設定にもかなり影響のあった時期であったと思います。
 そして最初の転機が訪れたのは、家にPCが入ってきたときでした。これはつまり、Webを通して情報を集めることが出来るようになったということで、それまでとは比べ物にならない量の情報に圧倒されてしまいました。中には到底自分には及びもつかないと思える様なものもあって、暫く間は自分の設定を書くのではなくて、それらを見て回ることが日課となりました。TRPG.NETの存在を知り、暴れまわったのもこの時期です(迷惑をかけてしまった方々、申し訳ありませんでした)。
 次の転機はその半年後に訪れました。ただでさえ暇だった私は更に暇になり、それを活用すべく自分のページを作ることしたのですが、その時に自分がこれまで作り上げてきた設定をアップすることにしました。そこでテキストを打ち込んでいくうちにまた穴が見つかりだし、作業は途切れ途切れになってしまいます。結局内容は中途半端なまま作業が中断してしまい、暫く時間が流れました。

 最後の転機は、つい最近、今年の正月前後です。IRCで相談を持ちかけたところ、その設定の不完全さが改めて浮き彫りになり、現在大幅な見直しと増量を目論んでいるところです。これまでの設定では詰めが甘く、「ではそこから何が導かれるのか?」や「それはプレイにどう影響を与えるのか?」ということに答えることが十分にできません。また「PC達は何のために冒険を行うのか?」に上手く答えることが出来ず、「シナリオのネタになるような設定を沢山盛り込んでいる」というわけでもありません。つまり、何のための設定なのか分からないぐらいの出来であった、ということです。今はこれを解決するべく、少しずつ努力を重ねている段階です。

 GURPSの楽しみの一つは、膨大な量のデータと柔軟性を生かしての世界構築にあると思っています。ゲームとして多少不完全な形に持っていくことまでして、それを追い求めているのですから、これを活用しない手は無いはずです。
 もしも、自分の思い描いた世界を書き下すことが出来たら。
 そして、その中でキャラクタを動かしてもらうことが出来るとしたら。
 これはきっと素晴らしいことでしょうし、とても楽しいものであると思います。


 然し、世界構築の際にいくつか注意しておくべき点があるとも思います。

その1……
 先ず、思いついたことは必ず紙にメモしておくこと。
 後で書こうと思っても、絶対に忘れてしまいます。忘れてからではもう遅いのですから、とにかく思いついた瞬間に形にしておくことが大切です。私もこれで何度も痛い目にあっています。

その2……
 メモした紙はきちんと整理しておくこと。
 いくらたくさんのことを思い浮かべることが出来て、それらを形にできたとしても、利用できないのでは話になりませんし、使おうと思ったことがメモされている紙がどこかにいってしまっては目も当てられません。ただメモするだけではなくて、きちんと分かりやすいように整理しておくことも重要です。

その3……
 設定、特にプレイに関する設定を書く時は、具体的な例を挙げると分かり易くなります。
 長々しい説明だけに終始してしまっては、読んでいるほうもうんざりしてしまうでしょうし、書いているほうも内容を掴み辛くなるかも知れません。”イメージが湧くような”具体例をいくつか挙げれば、分かりやすくなる上に忘れ辛くもなります。

その4……
 前述しましたが、出来るだけシナリオのネタになるような事柄を盛り込むと面白くなります。
 対立や友好、交易や地理の特性、それに最近の情勢などなど、こういった要素には事欠きません。書き手はとにかく出来る限り多くの事柄を詰め込んで、より可能性の幅を広げるべきです。書き手の脳の中にあることは、読み手には文字を通じてしか伝わらないのですから、多く書けば書くほど設定は使い勝手が良くなり、またイメージしやすくもなるはずです。


 設定を書き上げるということはとても楽しい作業です。
 熟練者から私と同じ初心者の皆さんまで、一回世界構築を試してみてはいかがでしょうか?
 きっと楽しめると思います。

GURPS情報倉庫 http://www.trpg.net/rule/GURPS/


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