大嵐
a long long time ago …
少し懐かしい話をしましょう。
まだD&D3Eが発売される前、僕がAD&D2ndばかり遊んでいた頃の事です。僕は『君の名は』に書いたように、とあるキャンペーンに参加していました。ある時、そのキャンペーンのセッションで、滋養たっぷりな温泉に浸かることを目的に秘湯があるという山に登ることになりました。
その秘湯はというと、ひとたび浸かれば時には能力値が上昇することがあるという大変御利益のある有名な温泉です。しかしながら、そんなに有名にも関わらず訪れる人は多くはありません。温泉街に来るのは実力のある冒険者ばかりだとか。
とは言え能力値が上がるなんてのは凄い事です。如何なる曰くがあるとしても、聞いてしまった以上行かずには収まりがつきません。しかも冒険者の常として、死んではレイズ・デッドで生き返るという事を繰り返しているので皆Conが低くなっています。是が非にでも温泉に浸かりConを取り戻したいのは山々です。
その山の中腹には、雨降龍神社(うずりゅうじんじゃ)と呼ばれる古代の荒ぶる雨龍――Rain Dragonという種類のDragonがいるのです――を祭った神社がありました。
神社があること自体は、特段気にするようなことでもありません(Greyhawkには東洋系の神様も存在します)。兎に角、途中の事は気にせずに登山を続けます。
山の天気は変わりやすい、とはよく言ったものです。出発した当初は好天に恵まれ、さして危険なこともなく進んだ山道ですが突如、空には暗雲が立ち込めあれよあれよという間にざんざん降りの大雨になってしまいました。
降ってきたばかりの頃は、大雨だ大変だと実感もなく進んでいたのですが途中からなんだか雨の雰囲気が変わってきました。
身を刺すような激しい雨、という表現があったりしますが本当に刺さったりしたたまったものではありません。しかし、その時僕達の頭上に降り注いでいたのは当に「身を刺すような雨」でした。
そう、何故か1ラウンド単位でダメージを喰らうのです。
1回当たりのダメージは大したことが無いのですが、こんなものがずーっと降っているわけですから、放っておけばあっという間に0点になり死んでしまいます。すぐさま避難する洞窟を発見し、そこでビバークをすることにしました。
ほっと一息ついたのもつかの間、滝のように降る雨は濁流となって洞窟に流れ込み水没の危険が今度は表出しました。
機転を利かせたメイジが入り口をウォール・オブ・ストーンで塞ぎました。すると今度は酸素が欠乏して窒息という新たな危険が発生です。
休む間もありません。
更にメイジが機転を利かせて、ものすごい勢いで穴を掘ることができる魔法のマトックで先ほど塞いだ入り口の最上段に空気穴を開け、事なきを得ます。
こうして数時間の間、豪雨が過ぎるのを待ちました。
D&Dの世界というのは、基本的に潤沢に魔法が存在しお金さえあれば魔法を利用して自然・人工の危険に簡単に立ち向かうことができます。
寒さ、暑さはもちろん乾きや空腹さえも通常のものでは全く問題になりません。そんな魔法に保護された冒険者達に“大自然の驚異”を感じさせるためには、上記のような一見やり過ぎと思えるシチュエーションを用意する必要があります。
もしPCが強くなりすぎて、単純にモンスタを出しただけでは障害にならない場合、上記のような“想像を絶する”悪天候+強力なモンスタ(例えばドラゴン)の合わせ技で憎きPC共から一本とってみては如何でしょうか。