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2003年05月号

天候と体臭、天候と設定構築

特集: 単発記事
筆者: Kyrie

 今月のテーマは天候です。
 天候。
 現実では雨を降らせることすら難しいというのに、ファンタジー世界の魔術師たちはバンバン変えやがります。
 さておき。

体臭

 梅雨時になると天気が悪く、洗濯物が中々乾かずに困った経験がある方々も多いのではないでしょうか? 私は最近振り回されております。乾燥機無しでどうにかならないものでしょうか。

 さておき、生乾きは恐怖の悪臭をもたらします。
 そう、何とも言えないあのステキな香りです。
 我々でさえこうなのだから、ファンタジー世界のキャラクタはと考えると、ぞっとします。
 何しろ彼らは滅多なことでは体を洗えませんし、勿論安全のために屋外では装備を外すことすらしません。宿に泊まるにはそれなりのまとまった金が必要ですし、何に襲われるか分からない屋外で鎧を外して寝ているなど言語道断です。
 ではもしも、分厚い鎧を着た戦士が、一週間の間町から町へと移動するとしたら?
 しかもそのとき、天気が雨がちだったら?
 …ちょっと想像したくないですね。

 然しここで踏み込んで考えてみましょう。
 ファンタジー世界には、魔法があります。そして、魔法のアイテムというものが存在します。
 GURPSでは魔化された品物が、それにあたるでしょうか。
 では、これを「臭い」に応用したらどうなるでしょうか?
 …お?
 結構いけるかもしれません。
 私たちの現実世界でも、「臭い」に関する商売は大成功してるじゃないですか。

 先ほどの例で言えば、鎧あるいは下着に《消臭》を魔化すると一瞬で問題は解決してしまいます。いくら汚れようが、菌が繁殖しようが、魔化の力にはそうそう勝てるものではありません。しかも魔化されているのが下着の類であれば、鎧のようにすぐに魔力が劣化することもなく、長く使い続けられます。
 女戦士であれば、更に進んで《芳香》を一緒に魔化するかもしれません。下着に《消臭》、鎧や盾、髪飾りに《芳香》とすれば、内側からの臭いをシャットアウトしつつ、外に良い香りを発散してイメージアップを狙うことができます。地味なところでは、靴下に《消臭》と水虫防止&治療の《殺菌》がいい味を出していたりします。
 むむむ。
 案外一般的で、商売にもなっているのではないでしょうか?
 一般に広く流通し始めているのなら、価格もそれなりに良心的になっているはずです。もしかしたら、そればっかりやっている魔術師が専用の安全で素早く魔化を終えることのできるオリジナル呪文を作ってしまっているかもしれません。

 然し、魔化は非常に時間のかかるものです。普通なら広く流通しているとしても、工業としては成立しないでしょう。
 ううむ。壁にぶつかってしまったようです。
 …
 をを。
 じゃあこれを起点にして産業革命が起こったことにすればいいんじゃないか。
 自動化/機械化による大量生産こそ、産業革命であります。
 多くの人に需要があり、コストダウンする必要があって、なおかつそれまでは手間隙かかるものだった。
 それが新たな魔化により生み出されれ、マナにより駆動される巨大施設で大量生産される。
 ふむ。
 臭いグッズで産業革命。
 これはこれで面白いかもしれません。
 おそらく、世界には劇的な変化が訪れるでしょう。
 あちらにも消臭服。こちらにも消臭服。どこの店先にも安い消臭服。そこかしこに溢れる消臭の文字。
 体臭や口臭の問題は消滅し、同時に悪臭と言う概念が薄れていき、やがてそれがマナーの低下を引き起こしたとして批判され、それでもやっぱり便利さには勝てなくて、果ては種族全体の嗅覚の減退を引き起こし…
 風が吹けば桶屋が儲かるみたいな論法ですが、楽しげです。

 …
 本当に使うかもしれませんね(笑)

天候と設定構築

 私はどうも、環境を調節すると言う要素が好きな様です。シムアースの影響を受けすぎているのでしょうか。
 さておき。
 世界構築、あるいはシナリオの舞台となる地域を設定するときに、気候は非常に重要な位置を占めます。文化に大きな影響を与え、食料等の店先に並ぶ品物の価格を変え、もしかしたらPC達の障害となるかも知れない、大切な要素です。そして細かい気候の設定は、日常の描写を少し楽にしてくれると言う効果もあります。
 学校の地理で習ったことですが、基本的に地球と同じぐらいの大きさと受熱量であれば、気候は赤道直下から熱帯気候→乾燥気候→温帯気候(→冷帯 気候)→寒帯気候、と推移していくようです。これを念頭において設定すると、何となくうまく設定できた気分に浸ることができたりするので、お勧めいたします。気候のバランスが地球と似ているため、その他の細かい設定を決めやすくなったりする副次効果もあります。
 ですが、勿論「いくつかの例外」は必須です。満遍なくベルト状に気候区分を配置したところで、それでは地球と大して変わらないばかりか、それよりも大雑把で詰まりません。それを克服する方法こそが、例外の設置なのです。
 さて昔、こんな設定を考えたことがありました。

 ――死の砂漠とも呼ばれる、広大な砂の海の遥か彼方。
 その真ん中に、この乾ききった世界からは想像もできないような光景が広がっています。
 ある線を境として砂の海がくっきりと緑の草原に姿を変えており、その向こうには森が広がっています。砂漠のど真ん中だというのに、鳥のせせらぎと川の流れが耳をくすぐり、青々とした木々の匂いが鼻をつきます。昼下がりには雲がどこからともなく湧き上がり、優しい雨で大地を潤します。何もかもが、外界と隔絶した緑の世界が、そこにあります。
 そして、その緑の世界の中心にある、「白い」魔法の都市。外界とは異なる、独自の文化を築き上げてきたこの都市の人々は、豊かな水と緑と魔法の恵みを拠り所に、とても華やかな生活を送っています。
 都市の中央に遥かにそびえる塔の先端には、街と緑を支える力の根源たる宝珠が安置されています。そして、それを守り、そこから力を引き出す為だけに生まれるとされる五人の魔術師と十二人の戦士達が、塔と宝珠、そして街を守り続けてきました。
 今、この地に邪悪な気配が忍び込みつつあります。それは木を腐らせ、水を濁らせ、鳥を殺し、人々を狂わせ、街を蝕んでいます。まだ大きな変化はありません――然し彼らは徐々にその力を強めています。
 この街に降り立った貴方は何を思うでしょうか?
 人を、街を守りたいと思うのでしょうか?それとも、こんな不自然な人工物など滅びるべきであると思うのでしょうか?
 いずれにせよ、貴方は此処にいます。そして、既に運命に巻き込まれているのです――

 つたない文章で申し訳ありません。
 これは、ある日耳にした「緑の街」という単語から連想した設定です。
 天候を操作する呪文を、個人のレベルで使用するのでは少し食い足りないと感じていたので、丁度良い素材になってくれました。今見返してみると、ちょっと恥ずかしいですね。
 この設定を思いついてから少したって、これと似た要素を組み込んだ世界を構築し始めてしまったので、結局一度も使えないままに終わってしまった”幻の”ネタでもあります。結構好きだっただけに、少し悲しかったのを覚えています。
 思い出してみてやっぱり気に入っているので、もしかしたら、何かに流用するかもしれません。

 ともあれ、これは一つの「例外の設置」にあたるものになっているのではないでしょうか。他にも、「灌漑で緑の世界に変わった砂漠」「木が切り倒され、砂漠と化した熱帯林」と言った人為的なものや、「極地なのにヤシが生い茂る島」「海の中にある、空気のたまっているところ」等と言うキワモノまで、 いろいろと考えることができます(最後のは…ちょっと違うか)。
 例外的な特徴を持つ地域と言うのは、それだけでシナリオや設定のネタに成り得ます。沢山ありすぎても辟易してしまうでしょうが、適量であれば良いとっかかりとなって、世界構築者やGM、PLの助けとなるでしょう。

まとまりませんが、この辺りで失礼いたします。


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