2004年01月号

アイディアをいただいてしまえ! 模倣はこんなにクリエティブだ

特集: 夜長に読書を一つ
筆者: 桜井@猫丸屋

まずは恒例のご挨拶から

 こんばんは、先月号は『TRPGとビジネススキルであれこれ』だけで力尽きてお休みしてしまいました、ごめんなさいな桜井@猫丸屋でございます。(相変わらず長い挨拶)
 今月号が出るころには、そろそろ『甘くて黒い例のブツ』を送りあう年中行事の話題も出始めて、もらえるアテなどないボクはブルーになりはじめるとか、なりはじめないとか──(ぶつぶつ)

「おいおい、本の紹介するんじゃなかったっけ?」

 いやいや、ごもっとも。こんな益体もない愚痴をもらしている場合ではありませんでした。

それではサクサクと今月の一冊をば

 さてもさても。
 ところで最近、何かお困りのことはございませんか?
 たとえばネタ詰まり起こしてるとか。

「うーん。まぁ、確かに明日のシナリオの話が浮かばんで困ってるな」

 はい来た、絶好のフリ。
 TRPGに限らず、公私も問わず何かモノを考えて仕事をする方々なら、必ず二度や三度は呟いたことのあるはずのこの一言。この一言を「ネタが出なくて困ってる、なんて言ってるヤツの気がしれねぇなぁ」に変える魔法のご本でございます。

「──また、そんな都合のいい話あるわきゃないだろ?」

 いえいえ、これがまたあるんでございますよ。
 もう締め切り間際に苦しむ小説家も、ネタが浮かばず頭を抱える漫画家も撲滅する勢いって寸法。
 そんな魔法のタネが、今月のネタ本『アイデアをいただいてしまえ! 模倣はこんなにクリエイティブだ』でございます。

「おいおい、要するにパクりかよ?」

 いやいや、とんでもございません。

なにをおっしゃいますのやら

 例えば物語。
 TRPGのシナリオに物語の要素を盛り込まれるGMさんは決して少なくないでしょう。(そして、それを望むプレイヤーさん,或いはセッション中に形作っていくことを楽しむプレイヤーさん達も)
 しかし。  人類が初めて物語らしいものを語り出したのが何千年前のことだかわかりませんが、語り部ってのは娼婦の次の職業候補にあげられるほど古い職業なわけでありまして。
 言い換えれば物語ってのは、それだけ長い時間を掛けて掘り尽くされてきているわけなんでございます。いわば掘り尽くされた鉱脈にも等しいところから独創性という鉱物を掘り出すことは容易ではありますまい。

 或いはゲームとしての仕組みや仕掛け。
 コンピュータゲーム,アナログゲーム含めて世の中にどれほどのゲームが溢れていることか。ことアナログゲームに関しては、何年何十年何百年──何千年と掛けて洗練されてきた優秀なゲーム達が既にあるわけで。
 しかも、それでなお欧米を中心に新しいゲームが生み出されてきております。
 コンピュータゲームに至っては、いうべくもなく。今や一つのビジネスとなったゲーム分野では優秀な人材が大量に投入され、日夜寝る間さえなく研究・開発が続けられている次第。
 これまでに考案されてきた仕組みや仕掛けは、とても数え切れるものではありますまい。その意味で、物語と同様にやはり掘り尽くされた鉱脈に近いところでございます。

 ──如何でございましょう?
 畢竟、洗練と組み合わせの妙を競うことはできても本質的に独創的なアイディアなんて浮かぶものじゃぁございますまい。
 それならいっそ──そう考えるのは果たして間違っているものかどうか。
 それでも納得いかない生真面目な御仁には、かの発明王トーマス=エジソン翁のこんな名句を。

「誰かほかの人が用いて成功した目新しくて興味深いアイデア、そういうアイデアを探すことを習慣としなさい。あなたのアイデアは、いまあなたが実際にかかえている問題への応用においてオリジナルで独創的であればよいのです」
(アイデアをいただいてしまえ! 訳者まえがきより)

 ──いやね、これもこの本からの引用なんでございますが。
 要するに洗練と組み合わせの妙で勝負しましょうやってわけでして。
 ありあまる独創も生真面目さも、来ないかもしれないアイディア待ちにするんではなく、洗練や組み合わせの検討に投入すれば宜しいじゃございませんか。

「まぁ、いーや。そういうコトにしとこうか。んで、具体的にはどーやんの?」

 はいはい、そうでございますね、ただ模倣しようと言うだけじゃ芸も責任もあったもんじゃありません。この本では具体的に次のようなメソッドを挙げて、具体例と模倣の素晴らしさを繰り返し説いています。

  1. 何かを代用することはできないか?
     (「それ」の代わりに「これ」を──つまり置き換え)
  2. 組み合わせることはできないか?
     (「あれ」と「これ」を組み合わせたらどうなるか)
  3. 大きくできないか、あるいは、小さくできないか?
     (極端に大きくしたり小さくしたり)
  4. これ以外の何かになれないだろうか?
     (「これ」の用途や立場を別にしたらどうなるか突き詰めてみる)
  5. 取り除くことができるものはないか?
     (「これ」から「それ」を取り除いたら──)
  6. 逆にすることはできないか?
     (「あれ」と「それ」を入れ替えてみたらどうなるだろう?)
  7. 過去から呼び戻すことができるものはないか?
     (温故知新──先人の知恵を拝借してみる)

 ね? なんかこれだけでも何かできそうじゃありませんか。
 しかも、この本の偉いのは成功例だけ挙げてるわけじゃないところ。ちゃんと失敗例も挙げております。(成功例に比べて少ないのがちょいと不満じゃぁございますが)
 さらに最終章の手前には浮かんだアイディアを検証するチェックポイントまでついて100倍お得。

「ふぅん──ま、そこまで言うなら試してみるかね。その独創的でオリジナルな応用ってヤツ」

 えぇ。是非ともお試しくださいまし。  それでは最後にもう一度、かの発明王トーマス=エジソン翁の言葉を引用して記事を締めさせていただきましょう。
(願わくば、貴方様のTRPGライフが単なる模倣に終わらないように)

「誰かほかの人が用いて成功した目新しくて興味深いアイデア、そういうアイデアを探すことを習慣としなさい。あなたのアイデアは、いまあなたが実際にかかえている問題への応用においてオリジナルで独創的であればよいのです」
(アイデアをいただいてしまえ! 訳者まえがきより)

 では、また来月!

 

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『アイデアをいただいてしまえ!模倣はこんなにクリエイティブだ』


追記.

 ところでこの本、アメリカで書かれたビジネス向けの書籍であります。
 ゆえに具体例は全てアメリカのビジネスの事例ばかり。意外に知らなかったエピソードなんかもありまして、最近流行りのトリビアの泉な無駄知識のオマケつきとなっております。

 あ、いやいやこれは余話の類。

 普段、ビジネス書籍なんてお堅いもの──と敬遠しがちじゃございます。しかし元来この手の書籍はバリバリ働くビジネスマン&ビジネスウーマンの皆様が読むためのもの。
 普段から残業続きに、部下からの突き上げ,上司からの重圧に耐えているお父さんお母さんにも読んで頂く為に、サクサク読みやすい(字が大きくて行間が広く、論旨が明確,段落がこまめに切れる)つくりにもなっております。
 ここは一つ、これを機にお手にとっては如何でございましょう?

 


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