2004年10月号

パソトラブルにご用心

特集: 単発記事
筆者: りこりす

 オンラインセッションで1番怖いものは何?
 ひとりよがりなGM?
 ダイス目の大暴走?
 タイピングスピードによる時差?
 寝落ち?
 いやいや、そんなものよりも遙かに恐ろしい、回避不能な問題がある。
 いわゆる「パソコントラブル」というものだろう。
 どんなに楽しくても、プレイヤーが絶好調でも、パソトラブル1つですべては水の泡、セッションの継続は不可能だ。
 だがしかし、オンラインセッションを行うもの全員がパソコンのプロフェッショナルとは限らない、やはりパソトラブルとオンラインセッションは切っても切り離せない関係にあるのだ。


 そんな中、奴は唐突に現れた。
 自称プログラマな奴のパソコンは毎日のように故障するんだ。
 昨日もセッション中ぷつりと姿を消し、今朝まで戻ってこなかったんだ。
 そして奴は今晩もセッションに参加する、
「もうパソコン直りましたから……」
 幾度と無く聞き飽きたその台詞を残しつつ。

 とにかくロリ顔なのにスタイルが良いのに身長が低いのに箸も持ったことがないようなお嬢様だのに背丈より大きな剣を振り舞わすすから能力値だけやたらと 高い、周りが全員自分に惚れてるとでも勘違いしてるんだろう、本人は性格が良くて好かれているとでも思いこんでいるのだろう、まぁそんな何処にでも良くい るありふれたPCだ。
 調査するわけでもパーティまとめるわけでも能動的にシナリオ進めるわけでもないからいても居なくても変わらない、とまで言ってしまうとかわいそうかも知れないが、事実そうだから仕方がない。
 そんなやる気があるのかないのかさえもよくわからない奴が唯一生き生きするとき、それは戦闘が始まったときだろう。
 奴は戦士、その戦闘力は侮れない、自ら矢面に躍り出て敵の攻撃を一手に引き受けつつ敵を撃破する、それこそが役目なのだから。
 だからこそえに、戦闘になると嬉々として率先して斬りかかる、唯一自分の見せ場なのだから、唯一の楽しみなのだから、唯一優越感を味わえる場なのだから、当然不利になるなんて個とは考えてもいない、まさか負けるなんてあり得ないことなのだ。
「攻撃(命中)、ダメージ(しょぼ)、回避(失敗)、ダメージ(鎧通過)」
「…………………………………たまにはそんなこともあるさ」
「攻撃(失敗)、回避(失敗)、ダメージ(痛い)」
 何発か攻撃をくらってしまい、後1発くらうと死んでしまうかもしれない、敵の強さも見極めずに戦闘に挑むんだ、こういう状況は決して珍しいことではない。
「…………」
「……………………」
 おかしい、セッション開始以来常にどうでも良いことばかり話していた奴が、戦闘になると元気100%な奴がなんの発言もしないじゃないか。
 5分待つ。
 10分待つ。
 待ちきれず、残りのメンバーで戦闘続行、戦士を失い苦戦しつつも長い時間を掛けてようやく戦闘終了、しかし苦戦の結果、今回の任務の完遂が微妙なラインへと追い込まれてしまった。
 約1名の欠損をほぼ忘却しつつ継続されたセッション、あと少しで与えられた任務を完遂出来る、そう、まさにその時だ。
「いやぁ、ごめんね、プロバイダ調子悪かったみたいで、何やっても繋がらなかったの」
「あ、もうお終い? 報酬と経験値はいくつ?」
「レベル上がったよ、これでみんなともっと差が開いたね。それじゃおやすみ」

 1日前は、戦闘中ハードディスクの故障で1晩戻らず、セッション失敗
 2日前は、戦闘中モニタの故障で戦闘勝利後に復帰、セッション成功
 3日前は、交渉失敗時に家のブレーカーが飛んで、任務成功時に復帰、セッション成功 そこで1つだけ問うてみたいのです。
“アクセスログって知ってますか?”


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