魔法使いの弟子もしくはおばあさんの話してくれた昔のこと
……私のことですか? 私の過去など、たいして面白くもないと思いますが。 まあ、いいですよ。わざわざ自分から宣伝することでもないと思っているだけで、別に隠しているわけではありませんからね。 私は、ある小さな町で雑貨屋を営む両親の下に生まれました。 どこにでもありそうな、そう、ちょうど私たち冒険者がゴブリン退治などを請け負って滞在するような、街道沿いのこじんまりとした町です。 私の記憶が確かならば、「守りの剣」が――ごく弱いものですが――あったはずです。 あなたも知ってのとおり、「守りの剣」は蛮族の侵入を阻むものです。 町の、短くはない歴史の中では、「剣のかけら」の補充が間に合わず、危険な状態になったことも時にはあったようです。 とはいえ、おおむね町には平和が続いていました。 ……けれど、「守りの剣」では、蛮族の侵入は防げても、人の悪意を防ぐことはできなかったのですね。 私の家は、宿屋をのぞけば、町で唯一といっていい「店」でした。 村に毛が生えた程度の小さな町のことですから、我が家と宿屋にはある意味、町中の現金が集まることになります。 宿屋には冒険者も滞在していますから、悪心を持った者が狙うなら、どちらになるかは明白でしょう。 ある夜、忍び込んできた賊に両親は殺害されました。 そのいきさつは見ていません。 [...]